心の会計

損を嫌う

効く場面: 持っている間

お金に色を付けてしまう

どういうクセ?

同じ金額でも、どこから来たかによって扱いを変えてしまう性質です。給与は慎重に使うのに、ボーナスや投資の利益は大胆に使う。実際にはどれも同じお金です。Li と Feldman(2025年)は、Thaler(1999年)が振り返った17の古典的な問題を、米国のオンライン標本(1問約500人)で追試し、11問で支持、3問で一部支持、3問で支持なしと報告しています。

相場で何が起きるか

儲けたお金を高リスクな商品に回しやすくなるのが「ハウスマネー効果」です。Dan(2025年)はその研究36本を集め、効果は小〜中程度(g=0.37)で、実験室のほうが現実に近い場面より強く、出版バイアスを考えると実際はもっと小さいかもしれないと報告しています。Choi ら(2009年)は、ある企業の401(k)(企業年金)で、加入者が自分の拠出分の配分を選ぶとき、会社が決める上乗せ分を考えに入れていなかったと示しています。

仕組みで防ぐ

資産と負債をすべて1枚の表に並べる。口座ごと、目的ごとに分けて眺めるのをやめ、合計で見る習慣を作ってください。全体で見たときに、その配分を自分で選ぶかを確認します。Kahneman は講演で、銘柄ごとに成績を追う狭い見方より、全体を1つのポートフォリオとして見る広い見方が合理的だと話しています。Dr. Deric は、旅行用に取り分けたお金が、高い利子の借金の返済より旅行に回りやすい例を挙げています。

出典

  1. 論文・英語 Li M, Feldman G(Royal Society Open Science)(2025) Revisiting mental accounting classic paradigms: Replication Registered Report of the problems reviewed in Thaler (1999)
  2. 論文・英語 Kasumi Dan(Frontiers in Psychology)(2025) The role of mental accounting in risk-taking and spending: a meta-analysis of the house-money effect
  3. 論文・英語 James J. Choi, David Laibson, Brigitte C. Madrian(American Economic Review。NBER 版のページを開いた)(2009) Mental Accounting in Portfolio Choice: Evidence from a Flypaper Effect
  4. 動画・英語 BCC Speakers DANIEL KAHNEMAN - Behavioral Finance
  5. 動画・英語 Dr. Deric Behavioral Finance【Dr. Deric】

解説動画: 6分で分かる『メンタルアカウンティング』/バーチャルエコノミスト 千莉

心の中に複数の財布がある: メンタルアカウンティングの「アカウント」は英語で口座の意味。人は心の中に複数の財布を持っていて、状況に応じた財布からお金を取り出して支払う。食費のアカウント、娯楽のアカウント、投資のアカウント——という具合に。

同じ金額なのに扱いが変わる: ラーメン屋で100円を節約する人が、不動産を買うときには数十万円の差を誤差に感じる。旅行先で高い土産を買って帰宅後に後悔するのも同じ現象。金額の大小ではなく、どの財布から出したかで判断が変わっている。

使われる側にもなる: この性質はマーケティングにも利用できると述べられる。自分がどの財布から払っているつもりなのかを自覚することが、そのまま防御になる。