分散を退屈と感じる

続けられない

効く場面: 持っている間

正しくやっているほど、何も起きない

どういうクセ?

分散され、低コストで、放置されたポートフォリオは驚くほど退屈です。人は何もしない時間が苦手で、Wilson ら(2014年)の11の実験では、6〜15分ひとりで考えるだけの部屋を楽しめない人が多く、電気ショックを自分に与えるほうを選ぶ人もいました。投資ではなく実験室の話ですが、何もしないより何かをしていたいという傾向の例です。

相場で何が起きるか

退屈しのぎに個別株を買う、話題のテーマ型を足す、レバレッジ商品に手を出す。ドイツの証券会社の顧客1,000人の調査(Dorn と Sengmueller、2009年)では、投資や賭け事を楽しむと答えた人の回転率は、ほかの人の2倍でした。フィンランドの Grinblatt と Keloharju(2009年)は、運転記録や心理検査などのデータで、刺激を求める傾向が強い人ほど売買が多い関係を報告しています。

仕組みで防ぐ

刺激が欲しいなら、資産の一部に上限を決めて隔離する。全体の5%までは自由に使う、と決めておけば、中核部分は守られます。Goetzmann と Kumar(2008年)は、米国の個人投資家に分散不足が多く、大半にとって損になると報告しています(優れた情報を持つ少数を除く)。ポートフォリオの大きさや売買費用が理由だという証拠は乏しいとも述べます。退屈は、仕組みが働いているしるしと考えてください。

出典

  1. 論文・英語 Wilson TD, Reinhard DA, Westgate EC ほか(Science)(2014) Just think: the challenges of the disengaged mind
  2. 論文・英語 Daniel Dorn, Paul Sengmueller(Management Science)(2009) Trading as Entertainment?
  3. 論文・英語 Mark Grinblatt, Matti Keloharju(The Journal of Finance)(2009) Sensation Seeking, Overconfidence, and Trading Activity
  4. 論文・英語 William N. Goetzmann, Alok Kumar(Review of Finance)(2008) Equity Portfolio Diversification

解説動画: ドル・コスト平均法とは/金融経済教育推進機構 (J-FLEC) チャンネル

判断しなくていい形にする: 買うタイミングを当てようとするほど、高値で買った後悔や買い逃した後悔がついて回る。定期的に一定額を買うと先に決めてしまうことで、毎回の判断そのものを無くすのがこの方法の本質。

退屈な代わりに効くもの: 毎月1万円ずつ買い続けた例では、10株ずつ買い続けた場合より1株あたり143.5円安く買えていた。何も判断していないのに単価が下がる——地味だが数字で確認できる効果として示されている。

ただし万能ではない: 一方的に下落し続ける相場では、時間分散をしても損をする。長い時間をかけてじっくり資産形成をしたい人に向いている方法だ、という位置づけで締めている。

解説動画: 松谷会長が聞く『ナッジとはなにか?』/資産運用業協会チャンネル

意思の力に頼らない: 同じ対談の第2回。ナッジは英語で「そっと押す」の意味で、押された方向に必ず行かなければならないわけではなく、選択の自由を残したまま良い方向へ寄せるカーナビのような仕組みだと説明される。

ボトルネックを先に見つける: うまくいかないとき、まず本人がやりたいのにできないのか、良い選択を知らないからできないのかを区別する。前者なら自制心が働く仕組みを、後者なら情報提供を——対処が変わるので、この切り分けが最初に来る。

面倒くさがりを利用する: やる気が強くない場合は、積極的に何もしなくてもそれができる仕組み(デフォルト)を使う。意思の力で毎回判断させないほうが続く、という設計思想が公的な場から語られている。