スポーツの中の流れ図鑑

変化球のカーブ(球技)

回転で落ちながら曲がり続ける投球。打者の手前で急に落ちたように見える投球です。実際にはリリースの直後からずっと曲がり続けていて、落差が大きく見えるのは球が目に近づく最後の数メートルだけです。重力だけで落ちる分に回転が生む下向きの力が加わり、同じ球速で回転のない球より20〜50センチ余分に沈みます。

ナックルボール(球技)

回転を殺して不規則に揺らす投球。ほとんど回転をかけない投球で、同じ握りで投げても毎回違う向きへ揺れます。捕手が捕り損ねて記録上の暴投になることもあり、打つ側だけでなく受ける側も苦労します。球速は直球より20〜40キロも遅いのに、速さに頼らず打ち取れる数少ない球種です。投げこなせる投手も限られます。

無回転シュート(球技)

回転のない球が空中で振れる蹴り方。サッカーで回転をほとんど与えずに蹴る球で、飛びながら左右へ不規則に振れます。守る側が手を出す位置を決めたあとに横へずれるため、止めにくい球として知られます。落ちぎわほど振れ幅が大きくなり、壁を越えてから軌道が変わるので、直接フリーキックでよく使われます。

ゴルフボールのディンプル(球技)

表面のくぼみが飛距離を伸ばす仕組み。表面いちめんに刻まれた浅いくぼみで、数は300〜500個ほどです。同じ速さで打ち出しても、つるつるの球に比べて飛距離が1.5〜2倍ほどまで伸びます。見た目のための模様ではなく、遠くへ飛ばすための形です。深さは0.1〜0.3ミリしかなく、指でなぞってやっと分かる程度です。

テニスのトップスピン(球技)

順回転で落として高く弾ませる打球。球の上側が前へ回る順回転で、高い弧を描いてから急に落ちる軌道になります。ネットのかなり上を通してもコートに収まり、弾んだあとは高く跳ねて相手を後ろへ下げます。強く振っても入るので、攻めと安全を同時に取れる打ち方として基本になりました。先に覚えるほど得をする回転です。

卓球の回転(球技)

軽い球ほど回転が軌道を変える競技。前へ回すドライブ、下へ切るカット、横へ回すサーブと、同じ速さでも軌道も弾み方も別物になります。球は直径40ミリ・2.7グラムしかなく、回転の効き方が球技のなかでもとりわけ大きく出ます。台という短い距離で軌道が曲がりきるので、回転を読めないと返球が浮き、そのまま強く打ち込まれます。

速球が浮き上がって見える(球技)

落ちが小さい球が伸びて見える理由。速い直球が打者の手元でひと伸びしたように見える現象で、高めに来た球ほどそう感じます。ただし軌道を記録すると、その球も最初から最後まで落ち続けています。上がっているのは球ではなく、打つ側の予想との差のほうです。感覚と計測がずれる代表例といえます。

自転車のドラフティング(走る・こぐ)

前の走者の後ろに入って空気を避ける走り方。時速40キロで走る自転車では、脚が生む力の8割前後が空気を押しのけることに消えます。前の走者にぴたりと付くと、同じ速さを保つ力が2〜4割減り、大きな集団の中ほどではもっと楽になります。見た目は同じ走り方なのに、息づかいと心拍がはっきり変わります。

マラソンの集団走(走る・こぐ)

風の負担を分け合って走る長距離の集団。マラソンの速さは時速18〜21キロほどで、空気を押しのけるのに使うエネルギーは全体の数パーセントにとどまります。それでも集団に入るとその一部が減り、42キロで1分前後の差になることがあります。自転車ほど劇的ではないぶん、順位を分ける細さで効いてきます。

スピードスケートの姿勢(走る・こぐ)

背中を水平に近づけて空気に当たる面を小さくする。トップ選手は時速50キロ前後で滑り、その速さでは進むのを妨げる力の7割以上が空気によるものになります。氷を削る抵抗より空気のほうが大きいので、背中を床と平行に近づけ、頭を下げ、片手や両手を腰の後ろへ回して、前から見た体の面積を小さくします。

タイムトライアル用の機材(走る・こぐ)

単独で走る種目のために空気を優先した道具立て。涙のような断面のフレーム、板でふさいだ後輪、後頭部が伸びたヘルメット、肘を前で支えるハンドル。どれも空気の通り道を整えるための形です。ただし受ける空気の力の7〜8割は乗り手の体が作るので、機材が受け持てるのは残りの2〜3割の中身でしかありません。

スキージャンプの姿勢(飛ぶ・滑る)

体と板をひとつの翼にして落ちる速さを抑える。踏み切った直後から上体を板へ近づけて前へ倒し、板の先を開いたV字の形を作ります。この姿勢のまま4〜6秒飛び続け、落ちる速さを抑えながら前へ進みます。距離を決めているのは跳ね上がった高さではなく、どれだけ長く滑空できたかのほうです。…

パラグライダー(飛ぶ・滑る)

布の翼に空気を詰めて飛ぶ、たたんで運べる乗りもの。たたむとリュックに入る布の翼です。前の縁に並んだ口から空気が入り、内側の圧力だけで形を保ちます。人は数十本のひもで下に吊られ、翼と一緒に前へ滑りながら降ります。斜面を走って浮かせるのが基本の始め方で、条件がよければ数分から数時間飛び続けられます。

円盤投げ(飛ぶ・滑る)

投げた円盤が空気に乗って滑るように飛ぶ投てき。手を離れた円盤は、進む向きに対して10度前後の小さな角度で飛び出します。毎秒6〜8回転しながらこまのように面の向きを保つため、軌道が下へ曲がるほど角度は少しずつ増えていきます。条件が合えば、同じ速さで投げ上げただけの物よりずっと遠くまで滑って着地します。

槍投げと砲丸投げの違い(飛ぶ・滑る)

空気が効く投てきと、ほとんど効かない投てき。砲丸は男子で7キロ台、直径12センチほどの金属球で、飛ぶ間に空気から受ける力は重さにくらべて小さく、離れた瞬間に軌道が決まります。槍は800グラム前後で細長く、飛んでいる最中の姿勢しだいで記録が変わります。同じ投てきでも空気の関わり方がまるで違います。

競泳の水着(水の中)

水の抵抗を削るための布と締めつけ。水の中では体が受ける抵抗が空気中とは桁違いで、水着は肌をなでる水の摩擦と体そのものの形の両方へ同時に手を入れる道具です。表面をなめらかに織り、縫い目を減らし、体をきつく締めて前から見た断面を小さく保ちます。着るのに20分近くかかるものもあり…

ドルフィンキックの渦(水の中)

足先から次々に離れていく水の輪。壁を蹴ったあとの潜水で、腰から足先へ波を送るように体をうねらせます。水中から撮ると、足先が返るたびに水の輪が一つずつ切り離され、体の後ろへ数珠つなぎの尾となって並んでいきます。輪は体が通り過ぎたあとも数秒間その場で回り続けています。水面から見えるのは白い泡だけですが…

水中での姿勢と抵抗(水の中)

一直線かどうかで進む距離が変わる。頭と腰と足が一直線に並んでいるかどうかで、同じ一かきで進める距離が変わります。腰が落ちて足が下がると、体は水を斜めに受ける一枚の板になり、前から見た面積が広がって、押しのける水が一気に増えます。力は同じでも進まない体に変わります。水の中の抵抗は目に見えないので…

カヌーのパドル(水の中)

水へ渡した勢いの反動で艇が進む。ブレードを水へ差し込むと水は後ろへ動きますが、動く距離は思うより短く、代わりに艇のほうが前へ出ます。差した場所が支点のように感じられるのはそのためです。抜いたあとの水面には左右一組の渦が残り、しばらく回りながら後ろへ流れていきます。この渦の大きさが…

サーフィンと波(水の中)

波の斜面を落ち続けて進む乗りもの。割れる直前の波の斜面を滑り降り続けます。ある速さから先は、板は浮かんでいるのではなく水を下へ押しのけながら滑る状態へ変わり、沈み込みが浅くなって濡れている面積が急に小さくなります。この切り替わりが起きると、同じ波でも板は急に軽く走り出します。見ている側からは分かりにくい…