槍投げと砲丸投げの違い
飛ぶ・滑る
空気が効く投てきと、ほとんど効かない投てき
何が起きている?
砲丸は男子で7キロ台、直径12センチほどの金属球で、飛ぶ間に空気から受ける力は重さにくらべて小さく、離れた瞬間に軌道が決まります。槍は800グラム前後で細長く、飛んでいる最中の姿勢しだいで記録が変わります。同じ投てきでも空気の関わり方がまるで違います。
流れとしての理屈
空気が及ぼす力は当たる面積と速さで決まり、重い物ほど同じ力では軌道が曲がりません。砲丸は重さのわりに小さいので、影響は大きくても数十センチです。槍は軽くて面が広く、同じ力がよく効きます。先をわずかに上げた姿勢なら空気を下へ曲げて上向きの力が生まれ、伏せすぎると抵抗ばかり増えて早く落ちます。
選手がしていること
砲丸は出す角度を30〜37度あたりに置き、離す高さと速さを最優先にします。槍は投げる向きと槍自身の傾きをそろえ、先を少しだけ上へ向けて送り出します。当日の風で槍の角度を変える選手は多く、砲丸ではそこまで気にしません。空気を相手にするかどうかで、練習の中身まで変わります。
勘違いしやすいところ
同じ投てきでも空気の効き方が違います。男子の槍は記録が伸びて危険になり、1986年に重心を前へずらす規格変更が入って、先が早く下を向くようになりました。空気が効く道具は、ルールで飛距離を調整できるという珍しい例です。砲丸ではこの手は使えません。
解説動画(海外・英語): World Record Progression: The Javelin/RunnerBoi
両手で投げていた時代: 記録が残り始めたのは1800年代末のフィンランドとスウェーデンで、当時は五種競技のような大会の一種目として行われ、左右の手で投げた合計を成績にしていたと動画は言います。槍の重さもまちまちでしたが、1891年には800グラムの規格に落ち着き、そこから30年ほどで記録は倍に伸びました。
中を空にした新しい槍: 1950年代、アメリカの選手が60メートルを超すと具合が悪くなる古い槍の性質に気づきます。工学を学んでいた兄弟が中を空にし、直径や密度をいじって、元のフィンランド製より表面積をおよそ3分の1増やした槍を作りました。試した選手はすぐに世界記録を更新し、他国も同じ形に切り替えます。
円盤の理屈を持ち込む: 1956年、スペインの選手が円盤投げと同じ回転の理屈を槍に持ち込み、手を滑らせて放つ投げ方を編み出します。48歳の本人が世界記録を破り、記録は1割から2割も跳ね上がりました。ところが10本に1本ほどしか区画に落ちず、観客に危ないとしてほとんど即座に禁止されます。
104メートルの衝撃: 1984年、東ドイツの選手が104.80メートルを投げ、槍は競技場からはみ出しかねないところまで飛びました。中継は、これで槍は重くされるだろうと伝えます。もともと平らに落ちて判定が難しいという問題があって作り替えは計画されていましたが、この一投で一気に早まりました。
重心を4センチ前へ移す: 1986年の変更は重心を4センチ前へ移し、あわせて表面積を減らすものでした。これで前の記録はもう届かないものになり、しばらく誰も90メートルを超えられません。握りの後ろに刻みを入れて飛距離を伸ばした槍も現れましたがこれも禁止。道具が何度も作り替えられた珍しい種目だと結びます。