テニスのトップスピン

球技

順回転で落として高く弾ませる打球

何が起きている?

球の上側が前へ回る順回転で、高い弧を描いてから急に落ちる軌道になります。ネットのかなり上を通してもコートに収まり、弾んだあとは高く跳ねて相手を後ろへ下げます。強く振っても入るので、攻めと安全を同時に取れる打ち方として基本になりました。先に覚えるほど得をする回転です。

流れとしての理屈

回転している球は、後ろへ流れ去る空気をまとめて上へ振ります。その見返りとして球は下へ押されるので、重力だけのときより早く落ちます。地面に触れたあとは回転が接地面をこすって前へ蹴り出します。高く弾むのは、急な角度で落ちてきた軌道にその蹴り出しが重なるからで、回転が球を持ち上げているのではありません。空中の落ちと地面での弾みは、同じ回転が別の場所で見せた顔です。曲げているのは球の後流の向きです。

選手がしていること

下から上へ振り抜き、面をかぶせすぎず薄くこすり上げます。回転量は毎分2000〜3000回転あたりが多く、ラケットの縦のガットが動くかどうかでも変わります。回転を増やすほど前へ進む速さは落ちるので、速さと外れにくさのどちらを取るかが、そのまま戦い方の違いになります。

勘違いしやすいところ

回転をかけると球が重くなる、と言われますが、重さそのものは変わりません。変わっているのは落ちる速さと弾み方だけです。受ける側が重いと感じるのは、高く弾んで打点が肩より上がり、体重を乗せて押し返しにくくなるからで、力の強さの問題ではありません。

解説動画: 海外プロコーチのフォアのスピン量が絶対に増える魔法のコーチングが有益すぎる...【アルカラス/フェデラー/シナー/ジョコビッチ/ムラトグルー】/モリス@海外テニス情報

プロの弾道は高い: 初心者ほど速い球を打ちたくて直線的な軌道を思い描くが、2013年シーズンに計測されたビッグ4のストロークはネットのかなり上を通っている。地面からの高さで最も高いナダルが約2.3メートル、いちばんネットに近いマレーでも1.5メートルあった。トップスピンは直線ではなく放物線として思い描く打球だという。

かごの上を越させる: コーチのムラトグルーは打つ人の前にボール籠などの障害物を置いて練習させる。ネットを越える前の球が線ではなく上へ向かうようにするためで、かごを越すには先に上げるしかない。打つ方向を前ではなく斜め上に意識させるとスイングの角度が自然に決まる。打ち終わりでも膝は曲がったまま、というのが彼の注文だ。

軸足に乗せる一瞬: 跳んでから振るのは逆で、軸足が伸び切ってから振っても良い球にならない。軸足でコートを押し、返る力と一緒にラケットを振り上げる。ムラトグルーはテニスは射撃に似ていると言う。撃ちながら動くことはできないので、打つ直前に体重を乗せて止まる一瞬を作る。足の力は腕の約3倍とも言われ、スイングをいじるより軸足に乗る意識のほうが威力を上げやすい。フェデラーは前振りの直前に右足へ体重を乗せ、沈んでから地面を蹴っている。

打点は思うより前: 最適な打点は想像以上に前にあり、左手を前に出すと目安になる。体の近くで取ると腕だけで振り上げる形になり、強い回転はかからない。ムラトグルーはこれを重い物を手で押し出す動きに例えた。体重が真ん中にあれば腕しか使えないが、押すなら体ごと入る。腰の回転が早すぎると打点が体の横に来るので、正面を向いた時に打点が体より前にあるかを見る。

ラケットを投げるように: スピン量の鍵としてムラトグルーが繰り返すのがラケットを投げるように振るという言葉。手首はドアノブを回す動きで、右に回してラケットダウン、左に回してスイング開始。手首を折る平手打ちになるとフラットになる。グリップエンドを球へ向けて振り出すとヘッドが遅れて出て、インパクトで返して持ち上げやすい。シナーはテイクバックの終わりでラケット面が後ろを向き、下から上へ擦り上げる角度に入る。