ナックルボール

球技

回転を殺して不規則に揺らす投球

何が起きている?

ほとんど回転をかけない投球で、同じ握りで投げても毎回違う向きへ揺れます。捕手が捕り損ねて記録上の暴投になることもあり、打つ側だけでなく受ける側も苦労します。球速は直球より20〜40キロも遅いのに、速さに頼らず打ち取れる数少ない球種です。投げこなせる投手も限られます。

流れとしての理屈

回転していない球の後ろでは、渦が左右交互に離れていきます。円柱に並ぶカルマン渦ほど規則正しくはならず、離れ方が入れ替わるたびに左右の圧力のつり合いが崩れて、横向きの力が向きを変えます。さらに縫い目が空中で止まったままなので、縫い目のある側とない側で空気のはがれ方も違います。いつどちらへ揺れるかは、一球ずつの予測はいまもできていません。

選手がしていること

爪を立ててボールを押し出し、指ではじかずに回転を消します。捕手に届くまでに四分の一から半回転ほどゆっくり回るのがよいとされ、飛ぶ途中で縫い目の向きが変わるぶん揺れが出ます。回りすぎるとはがれ方が平均され、ただの遅い球になって痛打されます。縫い目をどこへ向けて離すかで出方が変わるため、握りも離し方も投手ごとにまるで違い、教わって身につく球ではありません。

勘違いしやすいところ

遅いのだから打てるはずだ、と言われますが、バットに当たる瞬間の高さが読めないことが打ちにくさの正体です。揺れを風のいたずらだと考える人もいますが、原因は球そのものが作る後ろの流れなので、風のない屋内の球場でも同じように揺れます。空気さえあれば起きる揺れです。

解説動画(海外・英語): The Physics Of Baseball Pitches/Seeker

回転で曲げる球のなかの例外: 投手は握りと指の圧、リリースを変えて軌道を操る。四つの縫い目に指をかける4シームの速球はバックスピンがかかり、重力に逆らうように落ち方が小さく、まっすぐ進むように見える。これがマグヌス効果で、進行方向と同じ向きに回る側は空気に強く当たって圧力が上がり、その側から押される。カーブのほうはトップスピンで落として曲げる。

ほとんど回さずに投げる: この球種だけが例外で、飛行中に1回転しかしないように投げる。すると進むうちにカルマン渦の列ができ、球の左右から交互に渦が離れていく。その結果、球は左右に揺れ、どちらへ動くか読めない軌道になる、と番組は説明している。

縫い目が軌道を決めている: シンカーもスライダーもスクリューもチェンジアップも、やっていることは同じで、縫い目が空気を押しやって球にかかる圧力を変える。だから縫い目の高さが効く。プロが使う球は大学の球より縫い目が低くて滑らかで、投手が得る利点と握りの効きを抑えてあるという。

滑らかな球と傷ついた球: 縫い目を低くしたぶん抗力が小さくなるので、打者は滑らかな球ほど遠くへ飛ばせるという、打つ側の利点も同時に生まれている。地面に叩きつけられて傷のついた球を審判がその場で外すのは、腕のある投手なら傷を利用できるからだ、と番組は述べている。