無回転シュート

球技

回転のない球が空中で振れる蹴り方

何が起きている?

サッカーで回転をほとんど与えずに蹴る球で、飛びながら左右へ不規則に振れます。守る側が手を出す位置を決めたあとに横へずれるため、止めにくい球として知られます。落ちぎわほど振れ幅が大きくなり、壁を越えてから軌道が変わるので、直接フリーキックでよく使われます。

流れとしての理屈

回転がないと球の後ろで渦が左右交互に離れ、そのたびに横向きの力が出ます。加えてある速さの前後で表面すれすれの空気が乱れた流れに切り替わり、はがれる位置が急に後ろへ移ります。この切り替わりの目安がレイノルズ数です。切り替わりが片側だけで起きると球は横へ押され、飛ぶうちに速度が落ちて境目を通るので終盤ほど振れます。

選手がしていること

足首を固め、球の中心を面で押すように当てて回転を消します。中心から少しでもずれると回転がかかるので、助走の角度を浅めにとる選手が多いようです。空気を入れる口の位置を上へ向けて狙う人もいますが、効きの大きさは意見が分かれます。狙って毎回出せる球ではありません。

勘違いしやすいところ

回転をかけないと曲がらない、と思われがちですが、回転がないほうが読めない動きをします。マグヌス効果で狙って曲げるカーブとは、揺れの出どころがまったく違います。曲がる先を選べる球ではないので、どちらへ振れるかは本人にも分からず、決まるかどうかは運にも左右されます。

解説動画: 現代サッカーボールの空力特性/OCW Tsukuba

風洞で測る三方向の力: 筑波大の風洞は最大でおよそ時速200キロまで計測できる。置いたボールが受ける力は、進む向きの抗力・上下の揚力・左右の横力の三つに分けて測る。抗力は飛距離を決める後ろへ引く力で、無回転で急に曲がるブレ球に効くのは揚力と横力のほうだと整理される。

ジャブラニが暴れた根拠: 揚力と横力のばらつきを秒速20メートルと30メートルで比べた散布図では、2010年南アフリカ大会の公式球ジャブラニが他の球に比べて大きく振れていた。飛んでいる間に受ける力が落ち着かず、ブレる可能性が高いと読めるデータになっている。

キックロボットの着弾点: 初速は秒速30メートル、回転は2回転未満のほぼ無回転に設定し、5種類のボールをそれぞれ2つの向きで20回ずつ、計200回蹴って、ゴールネットに当たった点を高速カメラで記録した。ブラズーカと32枚パネルの一般球は安定、残る3種は置いた向きで着弾点が大きく動いた。

縫い目が剥離をずらす: 細かい粒子を流して表面の空気を見る可視化実験では、縫い目が2本で間隔が広いとおよそ120度の位置で流れがボールから離れた。剥離の場所に縫い目が重なると離れる点が後ろへ動き、間隔が狭いと一度浮きかけた流れが再びくっつき、次の縫い目まで粘る。置く向きで軌道が変わる根はここ。

突起の有無で入れ替わる: 同じ革と同じ縫い目のまま、パネル32枚・12枚・6枚それぞれに突起ありとなしを作った6種を比べると、秒速10から20メートルの中間域は突起ありの抗力が低く、秒速20メートルを超えると逆に突起なしが低い。初速秒速30メートル・打ち出し18度のフリーキック想定で12枚の球を計算すると、着弾点は突起なしが約40センチ高く、直径22センチのボール2個分になる。