タイムトライアル用の機材
走る・こぐ
単独で走る種目のために空気を優先した道具立て
何が起きている?
涙のような断面のフレーム、板でふさいだ後輪、後頭部が伸びたヘルメット、肘を前で支えるハンドル。どれも空気の通り道を整えるための形です。ただし受ける空気の力の7〜8割は乗り手の体が作るので、機材が受け持てるのは残りの2〜3割の中身でしかありません。
流れとしての理屈
丸いパイプの後ろでは流れが早くはがれ、幅の広い乱れた帯が残ります。帯の中は前面より圧力が低いので、前から押される力が後ろから押し返す力を上回り、その差がそのまま抵抗として残ります。これが圧力抗力で、表面をこする摩擦の分は別に加わります。断面を細長い涙形にすると流れが後ろまで沿い、帯が細くなって圧力差が縮みます。ふさいだ後輪はスポークが空気をかき混ぜるのを止める役です。
選手がしていること
風洞や実走で計りながら、ハンドルの高さと肘の幅を1センチ刻みで詰めます。ヘルメットは頭の角度が変わると効きも変わるので、姿勢とセットで選びます。形や寸法は競技団体の規定で縛られ、大会で検査を受けることもあります。規定は改定されるので最新の条文で確かめてください。
勘違いしやすいところ
軽さより空気が効く種目ですが、流線形なら必ず抵抗が小さいという思い込みはここでも危うい話です。細い断面は横風では帆のように働き、突風でハンドルを取られることがあります。機材だけ替えても乗り手の姿勢が変わらなければ、うたわれたほどの差は出ません。
解説動画(海外・英語): EXPLAINED: Aerodynamic savings for TT & triathlon!/Aero Coach
抵抗の8割は乗り手が作る: まず今のポジションで基準を測る。この乗り手の場合、受ける空気の力のうち自転車のぶんは2割ほどで、残り8割近くは体が作っている。だから機材より先に姿勢だと言う。前の回では服とヘルメットとセッティングを見直しただけで、空気抵抗の大きさを表す値が13%小さくなっている。
エアロバーは手と肘を寄せる: クリップオンのエアロバーを付けて握ると手が近づき、腕のまわりを空気が抜けやすくなる。バー自体も空気抵抗が小さいという。時速30キロで17.5ワット速くなり、そこから開いていた肘を詰め、手元と延長部を自分寄りへ動かすとさらに2.5ワット。同じ改善を時速45キロに当てはめると約65ワットぶんになる。
ヘルメットは人によって変わる: エアロロードヘルメット(Specialized Evade)から、バイザー一体型の本格的なTT用ヘルメットへ替えると速くはなったが、ふだん見る差より小さい結果だった。合う合わないが人それぞれなので、風洞か屋外の競技場で自分で試すしかないと繰り返す。それでもロード用より速いことが多く、今回も速かった方を使い続けた。
スキンスーツとオーバーシューズ: 長袖のワンピースは縫い目の置き場所で空気の流れを操り、部位ごとに生地を変えてある。ビブとジャージの組み合わせから替えると時速30キロで5ワット、時速45キロなら17ワット速い。靴ひもと靴の表面を覆うオーバーシューズも1ワット、速い側では3.5ワットの上積みになった。
ディスクホイールと、通しての29%減: すでに深リムだった足まわりを、後ろはディスク、前はさらに深いリムへ替えて時速30キロで2ワット強、時速45キロで7.5ワット。横風でディスクを嫌う人もいるが、圧力と重さの中心が前輪側へ移って車体は安定し、ハンドルを取られる力はむしろ減ると言う。最初の姿勢からの合計で空気抵抗の値は29%減、時速45キロなら100ワット近くの節約だった。