ドルフィンキックの渦
水の中
足先から次々に離れていく水の輪
何が起きている?
壁を蹴ったあとの潜水で、腰から足先へ波を送るように体をうねらせます。水中から撮ると、足先が返るたびに水の輪が一つずつ切り離され、体の後ろへ数珠つなぎの尾となって並んでいきます。輪は体が通り過ぎたあとも数秒間その場で回り続けています。水面から見えるのは白い泡だけですが、水の中では輪が階段のように並んでいます。
流れとしての理屈
足が水を後ろ下へ押しのけると、足先で水のかたまりが巻き込まれて渦輪になり、体から離れていきます。渦輪は水を後ろへ運び去るので、その反動で体が前へ押されます(運動量保存)。渡した勢いの分だけ進む一往復の取引です。ただしうねりの速さや振り幅と推進力の関係は選手ごとに違い、いちばん速い形はまだ完全には説明できていません。
選手がしていること
うねりの出発点は腰で、膝から下だけを振ると渦が途切れて尾が残りません。下向きだけでなく上向きの蹴りも同じくらい使い、体の左右へのぶれを消していきます。潜水できるのは規則で壁から15mまでなので、その手前で浮き上がる動きへつなぎます。水面すれすれでは体が波を作ってしまうので、体の厚みの2〜3倍ほど深い位置を通ります。
勘違いしやすいところ
足で水を下へかき下ろす動作、と考えると行きづまります。ただ押しのけただけの水は横へ逃げて散り、返ってくるものがありません。体が前へ出るのは、後ろ向きの勢いを持った渦として水に残せた分だけです。イルカの泳ぎも、かく量ではなく渦の残し方の側から語られます。壁を蹴った直後だけ速く感じるのは、渦が体のすぐ後ろにそろっているうちだからです。
解説動画(海外・英語): The Most Advanced Dolphin Kick Video Yet. Ronulus Ep. 5/Skills N' Talents (swimming)
渦を作ってから球を押す: 最後に置かれるのは感覚の作り方です。目指すのは上下に想像の球を押す感じ。ただしその前に、背骨を波のように動かして水中に渦を作ることが要ると順序を示します。締めの一言はうねりのずれ方で、腰が上がるときは胸と足が下がり、逆のときは逆になる、と。
波は背骨の分節から出る: うねれるのは背骨がいくつもの分節に分かれているからで、使うのは体幹の筋のうち背骨を曲げ伸ばしする筋だけ。ぎこちなく見える最大の原因は分節を別々に動かせないことだと言います。立ったまま一節ずつ曲げてみる自己テストを勧め、陸でできなくても重さの消える水中なら先に試せる、クランチよりよほど良い体幹運動だとも。
弱いのは戻す側の蹴り: 指導してきた泳者の99%は壁の蹴り出しが弱く、戻す側の蹴りはもっと弱い。直し方は仰向けでのドルフィンキックで、後ろへ強く蹴ることになるぶん、前向きの蹴りのよい釣り合いになるとしています。座り仕事や自転車で股関節の前側が硬いなら伸ばし、柔らかくなったら腰と尻とももの裏で脚を引き戻す。腰は上下だけでなく回旋と傾きも伴います。
浮くのは肺の空気: 潜ったまま進めない人へ、まず人は誰でも浮くと言い切ります。世界最高の泳者でも途中で蹴るのをやめれば浮いてくる、肺に空気があるからです。さらに肺の上のほうだけで吸うと頭側が上がった坂の姿勢になり、下の二本の肋骨を広げて肺の下まで入れると浮力の中心が重心へ寄って、より水平に浮ける。吐きすぎは早く息が尽きて沈みます。
苦しさの正体は二酸化炭素: 息が続かない悩みは簡単に解けると言います。血の酸素はたいてい96%ほど満たされていて、あの切迫感はたまった二酸化炭素の側。だから壁ごとに一回だけキックを足すのが最短の解で、一蹴りずつ耐性が上がる。水中で水平を保つ感覚の習得には100から500時間、それも泳いだ時間ではなく水中でドルフィンキックをした時間だとしています。