自転車のドラフティング
走る・こぐ
前の走者の後ろに入って空気を避ける走り方
何が起きている?
時速40キロで走る自転車では、脚が生む力の8割前後が空気を押しのけることに消えます。前の走者にぴたりと付くと、同じ速さを保つ力が2〜4割減り、大きな集団の中ほどではもっと楽になります。見た目は同じ走り方なのに、息づかいと心拍がはっきり変わります。
流れとしての理屈
先頭の体は板のように空気をせき止め、背中側では流れがはがれて後流と呼ばれる乱れた帯が後ろへ伸びます。後続はその帯の中を走るので、胸に当たる空気の勢いが弱まります。体の前と後ろの圧力差が縮み、押し戻す力の大半はこの差なので、差が縮んだぶんペダルが軽くなります。しかも帯を後続が埋めるため、先頭もわずかに楽になります。
選手がしていること
先頭を30秒から数分で交代し、隊列を回し続けます。車輪の間隔は20〜50センチ、視線は前輪ではなく相手の腰に置きます。横風の日は真後ろを外して風下側の斜め後ろに入るため、列は斜めに伸びていきます。集団の中では急ブレーキと蛇行がそのまま落車につながります。
勘違いしやすいところ
風のある日だけの技ではありません。無風でも進めば自転車の向かい風と同じことが起きるので効きます。壁の陰に隠れるという絵も少し違い、実際は動いている空気の帯に乗る形です。節約できる量は隊列の形と風向きで変わり、実走での正確な見積もりは今も難しいままです。
解説動画: トライアスロンレースに出場するなら絶対に把握しておかないといけない『ドラフティングのルール』/#1プリメーラチャンネル
前の人の風よけに入る: ドラフティングは前を走る人の風よけに入る走り方で、前の人の力を借りて自分は楽ができる。自転車レースでは必須の技術だが、一般のトライアスロンでは禁止されている。風よけでタイムが縮まり順位が上がっても、周りから見れば自分の力ではなく他人の力を借りた結果になってしまう、と話している。
ゾーンは10mか12m: 禁止される範囲はレースの距離で変わり、長い距離は前走者の前輪から後ろ12m、短い距離は10mがドラフティングゾーン。大会ごとに違うので要項で必ず確認する。「自転車何台分」と書かれていても車体の長さはまちまちなので、一度メジャーで測って距離感をつかむよう勧めている。目で見ると意外と長い。
抜く側が守ること: 前走者はキープレフトで走っているので、追い抜きは右から。ゾーンに入ったら20秒以内に抜き切る決まりで、相手の前輪より少し前に出た時点で追い抜きが成立する。抜いた直後に左へ切り込むと前を塞ぐ危険行為になるため、しばらく自分のラインを保ち、安全を確かめてから左へ戻る。
抜かれる側が守ること: 抜かれると分かったら速度を変えずそのまま走る。抜かれた後は5秒以内にゾーンの外、つまり相手の10mか12m後ろまで下がらなければならない。対抗意識を燃やしてすぐ抜き返すと、下がり切っていないぶん集団を作ったのと同じことになりルール違反。ジュニアのレースに特に多い。
やむを得ず入るとき: コーナーや道幅が極端に狭い場所で、ゾーンに入るまいと無理にラインをずらすと、膨らんでコースアウトしたりスリップして転倒したりとかえって危ない。前走者が安全なラインを取っているならそれに従ってよい。減速や加速の場面、審判の指示があるときも含め、安全確保のためなら容認される。