ゴルフボールのディンプル
球技
表面のくぼみが飛距離を伸ばす仕組み
何が起きている?
表面いちめんに刻まれた浅いくぼみで、数は300〜500個ほどです。同じ速さで打ち出しても、つるつるの球に比べて飛距離が1.5〜2倍ほどまで伸びます。見た目のための模様ではなく、遠くへ飛ばすための形です。深さは0.1〜0.3ミリしかなく、指でなぞってやっと分かる程度です。
流れとしての理屈
くぼみが表面すれすれの空気を早めに乱し、乱れた層は球の丸みに沿って後ろまで回り込めます。はがれる位置が後ろへずれると、球の裏側にできる圧力の低い渦の領域が細くなります。前と後ろの圧力の差が縮むぶん、球を後ろへ引き止める圧力抗力が減ります。表面をこする抵抗は増えますが、引き止める力の減り方のほうがずっと大きいのです。
選手がしていること
作る側はくぼみの数と深さと並べ方を変えて、飛び方と曲がりにくさを調整します。打つ側は後ろ回転を与えて浮かせることで滞空時間を稼ぎますが、上げすぎると失速します。泥や深い傷でくぼみが埋まると効きが落ちるので、試合中にこまめに拭くのは理にかなった行為です。
勘違いしやすいところ
くぼみが空気をつかんで持ち上げている、という説明をよく見かけますが違います。浮く力を出しているのは後ろ回転による上向きの力で、くぼみはその力を後押しはしますが、主な仕事は裏側の渦を細くすることです。表面を荒らしたほうが飛ぶという事実は、乱流は悪いものという思い込みをきれいに裏切ります。
解説動画: 【#8 B-Learning】ビーラーニング第8話「ディンプル」 |ブリヂストンによるゴルフを楽しむためのボール知識/ブリヂストンスポーツ
ディンプルはボールの翼: ディンプルはえくぼの意味。作り手の位置づけは、コアがエンジン、カバーがハンドル、そしてディンプルは翼です。飛行機も翼が無ければ浮くことも降りることもできないのと同じで、くぼみがボールを上へ上げる仕事と前へ運ぶ仕事を受け持つ、と。最後にはつるつるの球と右半分だけくぼみのある球を比べる実験があり、片側だけの球は右へ流れていきました。
数より表面の占有率: くぼみの直径・深さ・並べ方の組み合わせは無数にあり、数が多ければ良いというものではないと言います。効いてくるのは表面をどれだけくぼみで占められるかという占有の度合いで、それを上げていく過程で個数のほうが決まる、という順番です。深さについては浅いほど弾道は高く上がりやすく、深くするほど低くなるのが一般の傾向だとしています。
設計は計算と実打の往復: 手順は、まずパソコン上でくぼみの配置を設計してシミュレーションにかけ、次に金型を起こして実物のボールにし、打って距離を見る。この設計ならこの距離、という対応を確かめながら詰めていきます。パターへの影響を問われると、球が丸く見えなくなるほど極端にしない限り転がりは変わらず、影響しないよう設計していると答えています。
くぼみの中にくぼみ: 同社のデュアルディンプルは、ひとつのくぼみの中にもうひとつくぼみを重ねた二重構造。狙いは、飛び出してからの速い領域ではできるだけ抵抗を抑え、弾道の後半で落ちていく局面では揚力を残してゆっくり着地させること。前半と後半で求める働きを分けて、通しの飛距離を伸ばす考え方です。
穴でなく土手を設計する: もうひとつのデルタウィングディンプルは、くぼんだ穴の側ではなく縁の土手の形から設計する逆向きの発想で、その分表面の占有率を上げられます。載せるのはディスタンス系のボール。この系を使う人はスピンが多く出てしまうことがあるため、高スピンになっても過度な揚力が出ないようくぼみの側でも抑える、と説明しています。