カヌーのパドル

水の中

水へ渡した勢いの反動で艇が進む

何が起きている?

ブレードを水へ差し込むと水は後ろへ動きますが、動く距離は思うより短く、代わりに艇のほうが前へ出ます。差した場所が支点のように感じられるのはそのためです。抜いたあとの水面には左右一組の渦が残り、しばらく回りながら後ろへ流れていきます。この渦の大きさが、その一かきで動かした水の量の目印になります。

流れとしての理屈

ブレードが水を後ろへ動かすと、その水は渦になって置き去りにされ、後ろ向きの勢いを持ったまま残ります。水へ渡した勢いの反作用が艇を前へ運ぶ力です(運動量保存)。艇を横へ寄せるスカーリングだけは別で、ブレードを斜めに滑らせ、水を横へ曲げた反作用を横向きの力として受け取ります。

選手がしていること

入水は体の前でできるだけ深く、腕で押すのではなく脚と胴の回転で艇を送り出します。抜くのは腰の位置までで、後ろまで残すと水を持ち上げるだけになって進みません。水面を叩くと空気を巻き込み、支点が抜けて一かき分が空振りになります。テンポは一定に保つほうが速いとされます。

勘違いしやすいところ

大きなブレードほど進む、とは限りません。面積が増えると一かきの力は増えますが、艇が速いほど同じ力を出すのにブレードをさらに速く動かす必要が出て、一かきが重く回転数も落ちます。残る後流で無駄になっているのは後ろへ送った水の量ではなく、その水が激しく回るのに使われた分です。多めの水をおだやかに送るほうが、少ない水を強く弾くより残りが少なくて済みます。

解説動画(海外・英語): Stroke & Body Technique Module - Canoe Sprint/SportsceneTV

力は水の中で出すもの: 動画はまず、力は水の中に置くものだと言います。体全体で艇を支えて土台を作り、パドルを差した場所は動かさないまま、体で艇のほうを前へ送る。腕で引かずに背中と腹の大きな筋肉を使えば500メートルや1000メートルがもちますが、腕だけでは180メートルで力が尽きると話します。

一かきは入水で決まる: 一かきでいちばん大事なのは入水だと言います。しっかり水をつかめないと、その一かきの一部が失われてしまう。まず水へ食いつかせ、止めたブレードの脇を艇のほうが通り過ぎていく形をつくる。キャビテーションは少ないほどよく、水の中で捨てるエネルギーも小さいほどよい、というのが動画の見立てです。

ブレードは外へ横に抜く: ブレードの通り道と抜き方についても細かく触れます。ストロークの間、ブレードは艇から離れていく向きへ進み、その道筋は艇の先から出る後流とだいたい同じ線になります。抜くときも艇から離す向きで、ブレードはもともと横へ滑らせて水から出すように作られている、というのが動画の説明です。

足からつながる一本の力: 入水した瞬間、選手は足置きに当てた足とつながっています。足で押すのと同時に、引く側の肩と同じ速さで腰を後ろへ送り、脚と胴と背中と腕がひとつながりの動きになる。回るいすの艇なら、左脚を押すと右の腰が前へ出ます。ひねれる量は体幹の強さしだいで、弱ければ艇を安定させられないとも言います。

艇を跳ねさせないこと: 脚の押しがばらつくと腕の小さな筋肉に負担が移り、水中でのブレードの角度が変わって後ろで水を持ち上げる動きになります。左右どちらかに傾けば艇はロールして抗力が増え、その分だけ遅くなる。腰で折れて前後に動いても、上の手が下の手より前へ出ても、艇の後ろが沈んで跳ねると述べます。