保温・冷蔵・冷凍の使い分けの入口。
残ったご飯の置き場所は、老化(β化)が進む温度帯のどこに置くかという選び方です。檜作進(1970)は、種々のでんぷんの温度特性を調べた結果としてほぼ60℃以下で老化が起こり、温度が0℃に近づくほど速くなる傾向があったと書き、0〜4℃付近が最も速いとしています。さらに下げて−10〜−20℃に凍結すると、水が結晶してでんぷん分子が固定されるため、老化はほとんど起こらないとしています。保温・冷蔵・冷凍は、この帯のどこを選ぶかの違いです。決める順は、食べきるまでの時間が先、置き場所はそのあとです。
数時間のうちに食べきるなら、保温するまま置きます。農林水産省は、炊飯後に飯を70℃程度に保つことででんぷんの老化を抑制できると説明しており、60℃以上という檜作の線の内側に入ります。ただし止まるのは硬くなる側だけで、糖とアミノ酸によるメイラード反応の黄変は別に進みます。保温にしておけば劣化しない?はここで条件付きになります。おひつに移すと黄変は止まりますが、同時に60℃の帯からも外れます。木のおひつに移すとおいしくなる?のとおり、容器だけを替えて水分と食味を比べた公開データは見当たりません。
翌日以降に回すなら、冷凍するへ移します。檜作は、速やかに凍結して必要に応じて速やかに解凍すれば、常に新鮮なα化の状態で保存できるとしています。鈴木一成(1989・東京ガス技術研究所)は、0℃以下でも凍っていない米飯は老化が遅くなるだけで、水が凍結したときに老化が止まると報告しています。残ったご飯は熱いうちに冷凍する?については、柴田ら(2017)が、冷まし工程を置かずに直ちに冷凍した米飯で、解凍後の含水率とかたさが炊き立てと有意差なしだったと報告しています。
冷蔵庫に入れるのは、最も老化が速い帯に長く置く選び方になります。Choら(2026)は、炊きたての白米の相対結晶化度が12.1%、4℃で7日置くと17.2%、−18℃で21日置くと13.9%だったと報告しています。冷蔵庫のごはんが硬いと感じたとき、直すのは温め方ではなく置き場所のほうです。残ったご飯は冷蔵庫に入れる?という置き方も、傷みにくくする目的なら冷凍で同じ目的がかないます。
冷ますなら早く冷まします。大阪府は、セレウス菌が100℃30分の加熱でも分解されない芽胞を作るとし、原因食品に米飯と焼き飯を挙げています。同じ資料は、加熱後の食品を10℃以下で冷蔵保管し、焼き飯などを翌日再調理して食べることは避けるよう案内しています。室温に置いたまま時間を延ばさないことが、硬さとは別の理由で要る条件です。
戻すときは温め直すで一気に加熱します。Choらは、4℃で7日置いた米を電子レンジで温め直すと相対結晶化度が17.2%から14.5%まで下がったものの、炊きたての値には戻らなかったと報告しています。温め直すときに水をふりかける?は、加える水の量を変えて比べた公開データが見当たりません。温め直しても硬いときは、凍らせ方と戻し方を分けて記録します。炊く前の米の置き場所は米を保存するという別の工程で、米は冷蔵庫の野菜室で保存する?もそちら側の話です。
やりがちな失敗は、粗熱を取るつもりで室温に長く置くことです。冷凍したごはんがパサつくときも、凍らせるまでにかかった時間が記録に残っていなければ原因を追えません。しまった時刻と温め直した分数を書き添えておくと、次の一回の直し方につながります。数時間なら保温、翌日以降なら冷凍、という二択に寄せると迷いが減ります。
出典
- 論文 檜作進(調理科学)(1970) 炊飯とでんぷんの老化
- 論文 鈴木一成(東京ガス技術研究所・日本家政学会誌)(1989) 米飯の老化に及ぼす保存温度の影響
- 論文 柴田(石渡)奈緒美・廣瀬純子・宇田川瑛里・中澤暁輝・松田寛子(日本調理科学会誌)(2017) 冷凍米飯の品質に及ぼす炊飯後の冷まし工程と冷凍保存条件の影響
- 論文・英語 Cho DH, Ha M, Irawan F, Lee JH, Park J, Chung HJ(Food Research International)(2026) Modulation of starch ordering by cold storage and microwave reheating alters starch digestibility and glycemic response in cooked rice
- 公的機関 農林水産省 米の調理特性
- 公的機関 大阪府 セレウス菌、ウエルシュ菌による食中毒を防ごう!
