老化(β化)
老化(β化)は、炊けたごはんが冷めるとともに硬くぼそつく変化です。
温度で、ごはんが硬くなるか、火が通るか
起きていること
糊化でほどけたでんぷんの鎖が、時間とともに再び並び直して水を放し、硬くぼそついた状態へ戻る現象です。糊化(α化)と逆向きの変化で、冷蔵庫のごはんが硬いの正体にあたります。失われているのは水そのものではなく、水を抱えていた構造のほうで、温度を60℃以上へ戻すと粘りはある程度戻ります。味の劣化全体を指す語ではありません。島津製作所(メーカー)はDSC(示差走査熱量測定)で、パンの老化が数日で進む様子を熱量として示しています。
変わる条件
檜作進は0℃付近が最も速く、60℃以上や−10〜−20℃の凍結ではほぼ進まないとしています。鈴木一成はコシヒカリを+5・0・−5・−20℃で保存し、−20℃と凍結−5℃は1〜3か月保たれた一方、+5℃・0℃・非凍結−5℃は1〜2日で糊化率が急に下がり、非凍結では0℃が+5℃や−5℃より速く老化したと報告しています。管理栄養士²の事情(YouTube)は、直鎖状のアミロースほど老化しやすく、もち米は老化しにくいと説明しています。
よくある勘違い
「冷めると水分が抜けるから硬くなる」という言い換えは誤りです。ラップで包んでも硬くなるとおり、原因は蒸発ではなく、糊化(α化)でほどけた鎖が並び直して水を抱えられなくなることにあります。よく炊けた米飯の水分は63%前後で、最も老化しやすい範囲の近くです。この向きを取り違えると、残ったご飯は冷蔵庫に入れるが最も速い温度帯を選ぶ手順だと気づけません。
台所での意味
残ったご飯の置き場所は、温度と水分の2本で決まります。冷凍するのは老化の止まる側、冷蔵庫に入れるのは最も速い側で、同じ「冷やす」でも向きが逆になります。残ったご飯は熱いうちに冷凍するも保温にしておけば劣化しないも、この2本の上に置き直すと、どこまでが測られた話なのかが見えます。温め直しても硬いときの手がかりにもなります。
本文に出てくる道具
解説動画
視聴済み
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英語の解説動画です。日本語で探しても出てこない内容を、下に日本語でまとめています。
Starch Retrogradation | The Science of Stale Bread
硬くなるのは何か
動画は、3日たったパンが硬くなる正体をでんぷんの並び直しとして説明します。主材料の小麦粉は約70%がでんぷんで、でんぷんはブドウ糖がつながった鎖です。鎖には直鎖のアミロースと枝分かれしたアミロペクチンの2種類があり、この違いが以降の説明の土台になると述べます。
熱と水でほどける
でんぷんは水があるところで80℃前後まで加熱されると、水を吸って膨らみます。動画はこれを糊化(α化)と呼び、鎖どうしをつないでいた水素結合が切れ、水と新しく結び直すと説明します。粒が膨らむ過程ではアミロースの一部が外へ溶け出し、溶液にとろみが付くようになると続けます。
冷えて並び直す
加熱しすぎや力で粒が壊れると鎖が溶液へ放たれ、鎖どうしが結び付いて水を閉じ込めたゲルになります。冷えるにつれて網目は互いに近づき、元の結晶に近い状態へ戻ります。でんぷんどうしの水素結合が作り直され、抱えていた水が少しずつ外へ出される——ここが老化だと述べます。
遅らせる手立て
動画は老化そのものを無くすことはできないとし、遅らせる方法だけを挙げます。乳化剤ではレシチンやジアセチル酒石酸モノグリセリド、増粘多糖類では水を抱え込ませるCMCを配合に加える形で、いずれも水分が逃げるのを抑える側の手立てです。これらはパンを作る側の話として示されます。
米飯で読むと
題材はパンですが、描かれているのは水が外へ逃げる話ではなく、並び直した鎖がゲルの中の水を手放す過程です。この向きで読むと、米飯で起きる冷蔵庫のごはんが硬い現象も、名前が違うだけの同じ変化として並びます。動画は、遅らせることはできても止められない変化なのだと結びます。
出典
- 動画 管理栄養士2の事情 【管理栄養士²の事情】 でんぷんの糊化と老化 【解説】
- 動画 島津製作所分析計測機器 デンプンの糊化・老化測定【DSC】
- 論文 鈴木一成(1989) 米飯の老化に及ぼす保存温度の影響
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