近代建築図鑑
イギリス積み(材料と仕上げ)
一段ごとに、長手だけと小口だけが入れ替わります。明治期以降の日本の煉瓦造ではこの積み方が大半を占め、壁の厚みも段の並びから読み取れます。長い面(長手)だけを見せる段と、短い面(小口)だけを見せる段を、上下交互に重ねる積み方です。段ごとに向きが変わるため壁の中で継ぎ目が縦につながらず、厚み方向まで一体に組めます。…
フランス積み(材料と仕上げ)
同じ一段の中で、長手と小口が交互に並びます。上下の段で位置をずらすため正面が市松に見え、学術的にはフランドル積みと呼ぶ形にあたります。一つの段の中で長手と小口を交互に置き、上の段では小口が長手の中央に来るようにずらす積み方です。正面が市松の目になり、離れていても目地の並びで見当がつきます。…
スクラッチタイル(材料と仕上げ)
表面に縦の引っかき目を並べた、釉薬をかけないタイルです。筋の底に影が落ちるため、広い壁面でも平らな板のようには見えません。粘土の素地に櫛のような道具で縦の筋を入れ、釉薬をかけずに焼いたタイルです。筋の底へ影が落ちるので、大きな壁面でものっぺりせず、雨だれの跡も目立ちにくくなります。…
テラコッタ(材料と仕上げ)
型で成形して焼いた、大形の建築用陶器です。鉄筋コンクリートの壁に金物で留め、軒や柱頭、入口まわりの飾りとして使われました。型に粘土を詰めて抜き、乾かして焼いた中空の陶製部材です。裏を空洞にして軽くし、金物で鉄筋コンクリートの躯体へ留め、隙間にモルタルを詰めて据えます。石を彫るより軽く…
人造石洗い出し(材料と仕上げ)
塗ったモルタルを、固まりきる前に水で洗います。表面のセメント分だけが流れて種石の頭が現れ、石に似た面が左官の手だけで作られます。種石を混ぜたモルタルを塗り、固まりきる前に水と刷毛で表面を洗い、石の頭を出す左官仕上げです。流すのは表のセメント分だけで、石を切り出さずに石の肌を作れますから、玄関まわりや腰壁…
銅板張り(材料と仕上げ)
木造の正面に、薄い銅板を張って包みます。板の縁を折り重ねて留めるため釘が表に出ず、その割り付けがそのまま模様になります。木造の表側だけに薄い銅板を張り、隣り合う板の縁を折り重ねて留めた仕上げです。折り目(はぜ)で継ぐので釘の頭が表に出ず、雨を通さないうえ、木の面を火の粉から守る覆いにもなります。関東大震災の後…
大谷石(材料と仕上げ)
淡い緑灰色の面に、茶色い斑点が散ります。栃木県宇都宮市大谷町の周辺で採れる軽石凝灰岩で、この斑点は「ミソ」と呼ばれます。栃木県宇都宮市大谷町の周辺で採れる軽石凝灰岩で、火山灰と軽石が積もって固まった石です。のこぎりで挽けるほど軟らかく、花崗岩より軽いため、蔵の壁や塀、建物の腰から上まで幅広く使われました。…
打放しコンクリート(材料と仕上げ)
型枠を外した面を、そのまま仕上げとします。杉板か合板かで肌が変わり、型枠を締めた金物の跡が壁に等間隔で並びます。型枠を外した面に塗装も張り物もせず、そのまま仕上げとする作りです。型枠の内側に当てた材が肌に写るので、杉板なら木目と板の継ぎ目、合板なら平滑な面になります。壁の中には型枠の間隔を保つセパレーターが通り…
上げ下げ窓(窓と開口)
二枚のガラス戸を上下にすべらせて開ける窓です。戸と釣り合う錘を枠の中に隠しているため、縦長の比率と枠の脇に残る滑車の跡から、外に立ったままでも見当が付きます。上下二枚の戸を、縦の溝に沿ってすべらせて開ける窓です。戸の重さと釣り合う錘を左右の枠の中に隠し、上端の滑車に掛けた紐でつないであるため…
半円アーチ窓(窓と開口)
開口の頭を半円に組んだ窓です。放射状に並べた迫石の頂点に要石が入るか、水平の目地がそのまま頭を横切るかで、荷を受けている窓か飾りかが分かれます。窓の頭を半円形に積み、上からの荷を左右の壁へ流す造作です。石なら楔形の迫石を放射状に並べ、頂点に要石をはめます。煉瓦は小口を立てて一枚ずつ倒しながら積み…
鎧戸(窓と開口)
窓の外側に立てる、羽根板を斜めに並べた戸です。日差しと吹き込む雨を切りながら風は通す造作で、開いたまま壁へ留める金物の位置に、元の使い方が残ります。框の中に細い羽根板を斜めに並べ、窓の外側へ吊る戸です。羽根が外へ下がって傾くため、直射と吹き込む雨を切りながら風は抜けます。多くは木製で、二枚を左右へ開き…
ドーマー窓(窓と開口)
屋根の面から立ち上げて、小さな壁と窓をつくる屋根窓です。小屋裏を部屋として使うための開口で、立ち上がりがあるかどうかが天窓との分かれ目になります。屋根を切り欠き、垂直の壁を立てて、そこへ窓を入れる造作です。小屋裏に光と風が入り、天井の低い階を部屋として使えるようになります。頭には小さな屋根が載り…
スチールサッシ(窓と開口)
鋼の型材を組んでつくった窓枠です。木の建具より框が細く、広いガラス面と横に長い窓が可能になったため、昭和戦前の鉄筋コンクリート造にまとまって入りました。圧延した鋼の型材を切り、隅を溶接やリベットで留めて組んだ窓枠です。木より細い見付けで同じ強さが出るため、ガラスの面を広く取れ、柱と柱の間を横につなぐ長い窓もつくれます。…
円筒法の板ガラス(窓と開口)
筒状に吹いたガラスを切り開き、平らに伸ばした板ガラスです。表面がわずかにうねるため映り込んだ景色が波を打ち、俗に「ゆらゆらガラス」とも呼ばれます。溶けたガラスを長い筒に吹き、両端を落として縦に切り開き、炉の中で平らに伸ばした板です。機械で連続して引く後の板と違い、面がわずかにうねり、厚みも場所によって変わります。…
擬洋風建築(呼び名と様式)
在来の技術を持つ大工棟梁が、洋風を見よう見まねで組み立てた建築です。幕末から明治初期の庁舎・学校・病院に多く、木造の軸組へ洋風の意匠を載せた点で本格的な洋風と分かれます。骨組みは在来の木造軸組のまま、外に洋風の意匠をまとわせた建築です。壁は漆喰の塗り込めか下見板張り、開口には上げ下げ窓、正面には塔屋やベランダを立て…
看板建築(呼び名と様式)
正面だけを平らな一枚の面で覆った、木造の店舗兼住宅です。関東大震災の後に建った形で、藤森照信と堀勇良が1975年の日本建築学会大会で示した呼び名が広まりました。二階建から三階建の店舗兼住宅で、道に面した正面だけを銅板・モルタル・タイルで平らに覆います。覆う面は屋号を掲げる看板の下地であり…
辰野式(呼び名と様式)
赤い煉瓦の壁に、白い石の帯が水平に走ります。ドームや小塔を頂く構えとあわせて広く模倣されたため、外観だけでは辰野金吾本人の設計とは決まりません。赤い化粧煉瓦の壁面に、白い花崗岩の帯を水平に何段も回す作りです。窓台や階の境の高さで石を通し、開口のまわりにも白い石を差すため、壁が横縞に見えます。頂部にはドームや八角の小塔…
帝冠様式(呼び名と様式)
洋風の躯体に、瓦葺きの和風の屋根が載ります。鉄筋コンクリート造で建った官庁や博物館に1930年代の日本で集まった作りで、この呼び名は後から付いた枠です。鉄筋コンクリート造の洋風の躯体に、瓦を葺いた和風の屋根を載せた作りです。柱と梁で組んだ箱の上に入母屋造や方形の大屋根を置き、軒には本瓦葺の瓦を並べ…