イギリス積み

材料と仕上げ

時代: 明治以降

一段ごとに、長手だけと小口だけが入れ替わります。明治期以降の日本の煉瓦造ではこの積み方が大半を占め、壁の厚みも段の並びから読み取れます。

どんな材料・造作か

長い面(長手)だけを見せる段と、短い面(小口)だけを見せる段を、上下交互に重ねる積み方です。段ごとに向きが変わるため壁の中で継ぎ目が縦につながらず、厚み方向まで一体に組めます。日本工業規格の普通煉瓦(並形)は長さ210mm・幅100mm・厚さ60mmで、この寸法の組み合わせから一枚半、二枚といった壁の厚さが決まります。窓の側面や出入口の返しでは厚みが断面として見え、壁が構造として積まれているのかどうかまで分かります。

見分けの決め手

目の高さの一段を左右にたどり、その段が長手だけか小口だけかを確かめます。長短が段ごとに入れ替わっていれば、この積み方です。次に目地を見ると、かまぼこ状に盛り上げた覆輪目地か、面を平らに納めた平目地かで手のかけ方が分かれます。東京の東京駅丸ノ内本屋の外壁は前者で、京都府舞鶴市の舞鶴旧鎮守府倉庫施設のような倉庫では、飾りを省いた納まりが多くなります。角には羊羹と呼ばれる幅の狭い煉瓦が挟まり、そこで段の割り付けを整えます。

いつ頃のものか

明治10年代以降の煉瓦造に行き渡ります。幕末から明治初めはフランス積みが多く、その後は強さと手間の面でこちらへ移りました。群馬の碓氷峠鉄道施設の煉瓦アーチ橋は1892年(明治25年)、京都府の舞鶴旧鎮守府倉庫施設は明治30年代、東京の東京駅丸ノ内本屋は1914年(大正3年)の竣工で、いずれも国の重要文化財です。白い帯を回す辰野式も、この積み方の上に立ちます。積み方だけで年代は決めず、指定説明の記述と合わせて読みます。

取り違えやすい相手

同じ煉瓦のフランス積みが第一の相手で、一段の中に長手と小口が交互に出ていれば向こうです。すべての段を小口で見せる小口積みも別で、煙突のような曲面や薄い壁に使われます。もう一つは鉄筋コンクリートの躯体に張った化粧煉瓦やタイルで、窓の側面や出隅に厚みが出ているかが分かれ目になります。厚みが煉瓦一枚ぶんに足りず、隅で薄い板の縁が見えるなら、それは構造ではなく張り物です。壁の隅は、この見分けがいちばん出る場所です。