人造石洗い出し
材料と仕上げ
時代: 明治以降
塗ったモルタルを、固まりきる前に水で洗います。表面のセメント分だけが流れて種石の頭が現れ、石に似た面が左官の手だけで作られます。
どんな材料・造作か
種石を混ぜたモルタルを塗り、固まりきる前に水と刷毛で表面を洗い、石の頭を出す左官仕上げです。流すのは表のセメント分だけで、石を切り出さずに石の肌を作れますから、玄関まわりや腰壁、門柱に広く使われました。種石は白い寒水石、黒い那智黒、川砂利などで、粒の大きさと色が見え方を決めます。日本左官業組合連合会の技法解説では、洗う時機の見きわめが仕上がりを左右すると説明されています。早すぎれば種石ごと流れ、遅ければ頭が出ません。
見分けの決め手
出隅と見切りに、石どうしの合わせ目があるかを見ます。切石を張った壁なら角で石が突き合いますが、塗り物であるこちらは角が一続きにまわり、丸みを付けた入隅も作れます。近づくと粒の大きさが揃い、面いっぱいに均一に散っていることが分かり、結晶の向きや層が見える自然石とは違います。東京の江戸東京たてもの園へ移された村上精華堂は、正面全体がこの仕上げで、柱形まで同じ面で通されています。角の丸みは、塗り物ならではの形です。
いつ頃のものか
明治後期から昭和戦前の建物に多く、戦後も学校や住宅の玄関で続きます。もとは明治10年代に服部長七が広めた人造石の系譜で、石灰と真砂土を叩き締める工法から、セメントを混ぜて洗い出す形へ移りました。三重の四日市旧港に残る潮吹防波堤は1893年(明治26年)の完成で、この人造石によります。服部長七は愛知の明治用水の工事にも、同じ材料を用いました。焼き物で飾りを作ったテラコッタと違い、こちらは左官が現場で面を作ります。
取り違えやすい相手
同じ人造石でも磨いて平らに仕上げる研ぎ出しは別で、粒が切られて平らな断面を見せているか、丸い頭のまま出ているかで分かれます。リシン掻き落としは硬化してから金物で削るため、粒が割れて角が立ち、粗い肌になります。本物の石張りとは角の合わせ目と目地で見分け、大谷石のように斑の出る石とは、粒の揃い方で区別します。塗り物の側は、面のどこを取っても粒の密度が変わりません。見切りの納まりまで見れば、迷いは減ります。