設計と計算図鑑
霧の滞空時間と落下距離(空間と気流)
霧は粒が小さいほど長く漂います。落ちる速さは直径の2乗で効くので、10マイクロメートルと100マイクロメートルでは百倍ちがいます。チャンバーの高さと、棚の段数と段の間隔をどこまで詰められるかを決めるための量です。噴霧を止めたあと、空中に残った粒がいつ床に着くかで、霧が根の高さに居られる時間が決まります。…
根の塊を多孔質として扱う(空間と気流)
根の塊は、細かい形を追わずに抵抗の場として扱います。圧力の落ち方を風速の1次と2次の項で表すダルシー・フォルヒハイマー式が、計算でよく使われる形です。根を一本ずつ形どおりに刻むと、格子の数が増えすぎて計算が終わりません。そこで根群をまとめて、通りにくい場として置き換えます。栽培空間をCFDで解くときに…
株のまわりの風速の帯(空間と気流)
風は速いほどよいわけではありません。植物工場の研究では、葉のまわりの風速がある帯に入っている面積の割合を、設計の良し悪しに使っています。効いているのは風そのものではなく、葉の際にできる動きの鈍い空気の層をどれだけ薄くできるかです。層が厚いままだと熱も水蒸気も抜けず、蒸散が根の水を引く力も鈍ります。…
換気回数と密閉度(空間と気流)
空気を1時間に何回入れ替えるかが、設計の前提になります。密閉した人工光型と、窓を開けた温室とでは、桁がいくつも違います。部屋の空気が1時間に何回入れ替わるかで、二酸化炭素・水蒸気・熱が外へ出る量が決まります。密閉度を上げれば水の収支の回収側が効き、虫や埃も入りにくくなります。ただし出ていかない熱と湿りは…
空間のムラをどう測るか(空間と気流)
平均値がそろっていても、隅と中央では別のことが起きます。変動係数や、目標の範囲に入った面積の割合を使って、ムラを一つの数字にします。同じ棚の中でも、場所ごとに風速も霧の量も違います。ばらつきを一つの数字にして、案どうしを比べられる形にするのがここの役目です。数字にしておけば…
壁と結露に取られる霧(空間と気流)
霧のすべてが根に届くわけではありません。壁や配管に付いた分と、冷却面で結露した分は、根の外へ抜けていきます。ノズルから出た量と、根が受け取った量は別のものです。途中で取られる道筋を先に並べておくと、噴霧の長さやノズルの本数を決めるときの見当が変わります。壁に付いた分は跳ね返りと壁の水膜になり…
噴霧角と届く範囲(数と配置)
1本のノズルが濡らせる範囲は、角度と距離で決まります。角度が同じでも距離が2倍になれば、同じ量が4倍の面積に広がります。ノズル1本が受け持つ面積を決めるための幾何です。円錐状に広がる噴霧が濡らす直径は、およそ2L×tan(θ/2)。Lは吐出口から根までの距離、θは噴霧角です。面積は距離の2乗で増えるので…
ノズルの本数と間隔(数と配置)
本数は、隣とどれだけ重ねるかで決まります。重ならないと切れ目ができ、重ねすぎると水も電気も増えます。何本要るかを、勘ではなく重なりの量から決めるための考え方です。隣り合う噴霧が重なる幅(重ねしろ)を先に決めると間隔が決まり、槽の長さを間隔で割れば本数が出ます。重なりが足りないと株ごとに届く量が変わり…
ノズルの向きと取り付け高さ(数と配置)
同じノズルでも、向きと高さで根に届く量が変わります。試験では、噴霧量と高さを組み合わせて、どこがよく濡れるかを確かめます。どこを狙い、どの高さに付けるかを決めるための考え方です。狙う先は葉ではなく根域で、これから伸びる先まで見込んで向きを決めます。高さが変われば根までの距離も変わり…
棚の段数と段の間隔(数と配置)
段を増やすほど、1段に使える高さは減ります。光源と株の距離、根の入る箱の深さ、手が入る隙間を、同じ高さの取り合いとして見ます。限られた天井高を何段にどう分けるかを決めるための考え方です。1段ぶんの高さは、光源と株の距離、根が入る箱の深さ、手を入れる隙間の足し算で決まります。段を増やせば床面積あたりの株数は増え…
株間と栽培密度(数と配置)
密度を上げると、1株は小さくなり、面積あたりは増えます。どちらの数字で語るかで、同じ試験の結果が逆向きに読めます。何株を、どれだけ離して置くかを決めるための考え方です。密度を上げると1株が受け取る光と場所が減るので、1株は小さくなります。それでも面積あたりの重さは増えます。1株あたりで語るか面積あたりで語るかで…
配管の圧力損失と圧のそろえ方(数と配置)
末端のノズルには、手前より低い圧力しか届きません。管の長さと径から損失を計算し、どこまでのばらつきを許すかを先に決めます。どこまで圧のばらつきを許すかを決めるための考え方です。管の摩擦による損失はダルシー・ワイスバッハの式Δp = f(L/D)(ρv²/2)で表され、流速の2乗で増えます。…
加圧に要る電力(エネルギーと水)
ポンプの電力は、圧力と流量の掛け算から出ます。同じ流量でも圧力を2倍にすれば、水に与える動力も2倍になります。ポンプの大きさと間欠の組み方を、電力の側から決めるための量です。水に与える動力は圧力差と流量の積で決まるので、粒を細かくしようとして圧を上げれば、その分がそのまま動力に返ってきます。…
送風に要る電力(エネルギーと水)
風量を上げると、電力は3乗で効いてきます。相似則では、風量は回転数に、圧力は2乗に、動力は3乗に比例します。送風機を強くするか、通り道の抵抗を下げるかを決めるための関係です。相似則では回転数を上げると風量は1乗、圧力は2乗、動力は3乗で増えます。風を1割強めるだけで動力はおよそ3割増えるので…
水の収支(エネルギーと水)
入れた水がどこへ行ったかを、行き先ごとに数えます。株が取り込んだ分、蒸散した分、回収した分、外へ出た分に分けると、はじめて節水の話を比べられます。節水の話を比べられる形にするための勘定です。水利用効率は株と培地に残った量と回収した量の合計を、供給した量で割った値と定義されます。入れた水は、株が取り込む分、蒸散する分…
熱と除湿の負担(エネルギーと水)
閉じた部屋では、入れた電力はほぼ熱として残ります。照明の熱と、蒸散した水を結露させる潜熱の両方を、空調が引き受けます。空調と除湿にどれだけの容量を用意するかを決めるための量です。断熱と気密の高い部屋では…
栽培空間をCFDで解く(計算と実験)
CFDは空間を細かく割って、流れを数値で解く方法です。格子の細かさと乱流の扱いで答えが変わるため、検証と妥当性確認が別に要ります。霧と空気が棚のどこをどう通るかを、作る前に数値で見積もるための道具です。送風機の位置や棚の割りつけを変えた案を並べ、株のまわりの風速の帯や霧が片側にしか届かないの起きかたとして比べられます。…
ストークス数と捕まる割合(計算と実験)
粒が流れを曲がりきれるかどうかが、ストークス数です。小さすぎる粒は根をよけて通り、大きすぎる粒は手前で落ちます。霧の粒が根や支柱を前にして、流れと一緒に曲がるか、慣性のままぶつかるかを分ける目安です。小さすぎる粒は根をよけて空気と一緒に出ていき、大きすぎる粒は届く前に落ちます。ザウター平均径をいくつに置くか…
風洞とPIVで確かめる(計算と実験)
計算が合っているかは、実物の流れを測って確かめます。風洞では圧力の差と捕まる量を、PIVでは粒子に光を当てて速度の分布を写します。計算で出した流れが実物と合っているかを、測って確かめるための実験です。確かめる相手は主に二つで、根の塊を多孔質として扱うときの抵抗の係数と、ストークス数と捕まる割合で使う捕集効率です。…
目的が二つ以上あるときの最適(計算と実験)
性能とコストは、同時に最良にはできません。どちらかを良くすると他方が悪くなる、その境目の集まりをパレート最適と呼びます。酸素をよく届けることと、電気や設備を増やさないことは同時には最良になりません。片方を良くすると他方が落ちる、その境目の集まりがパレート最適です。送風に要る電力と棚の段数と段の間隔を横に並べ…