霧の滞空時間と落下距離

空間と気流

霧は粒が小さいほど長く漂います。落ちる速さは直径の2乗で効くので、10マイクロメートルと100マイクロメートルでは百倍ちがいます。

何を決めるための考え方か

チャンバーの高さと、棚の段数と段の間隔をどこまで詰められるかを決めるための量です。噴霧を止めたあと、空中に残った粒がいつ床に着くかで、霧が根の高さに居られる時間が決まります。止めてすぐ落ちきる粒と、次の噴霧まで残る粒が混ざります。ノズルを向けた方向よりも、落ちる速さと部屋の空気の動きのほうが行き先を決める場面が多くなります。

何を計算・計測するか

式と粒径ごとの落ちる速さは落ちる粒と浮く粒に置きました。ここで使うのはその先で、ノズルから栽培面までの高さを終端速度で割り、床に着くまでの時間を出します。100µmで約0.3m/sなら、30cmを1秒ほどで抜ける勘定になります(自前で式に入れて出した値)。落ちきるまでが休みの長さ(休止時間の決めかた)より短ければ、次の噴霧まで空中に霧は残りません。

つまずくところ

この式が使えるのは粒子レイノルズ数が1より小さいあいだまでで、そこで誤差1割ほどを見込みます。直径100µmでは同じ計算でレイノルズ数が2ほどになり、すでに式の外です。0.3m/sは大きめの見積もりになります。加えて、株のまわりの風速の帯の風が落下より速ければ粒は流されますし、飛んでいる間に蒸発するぶん径も変わります。

どこまで確かめられているか

式はストークスの法則で、流体力学の教科書にある形です。適用の範囲をレイノルズ数1未満までとし、そこで誤差1割ほどと置く書き方も広く使われています。ここに並べた速さは自前で式に入れて出した値で、実測ではありません。霧がどれだけ漂っていたかを測った公開値は、噴霧栽培の実機では見つけられませんでした。比べるには空間のムラをどう測るかと同じく、測る場所の決めごとが要ります。

解説動画: Sediment deposition and Stokes’ Law/Oklahoma State University Soil Physics

落ちる速さの式: 動画は、水の中を落ちる粒の速さをストークスの法則で見積もります。下向きの重力と浮力の差、上向きの粘性による抗力6πηrUがつり合った点が終端速度で、そこから落ちる速さは直径の2乗に比例するという関係が出ます。使う前に粒は球・懸濁は薄く粒どうしが干渉しない・流れは層流という三つの前提を置く、と断ります。

一桁で二桁変わる: 動画は、直径を一桁小さくすると落ちる速さは二桁遅くなると繰り返し示します。密度2650kg/m³の粒が水を1m落ちるのにかかる時間は、細砂ほどの5×10⁻²mmで7.4分。シルトの5×10⁻³mmでは12時間、粘土の5×10⁻⁴mmでは51日と、桁ごとに計算していきます。ここが理解の要だ、と念を押します。

式の外に出る前提: 動画は、球とみなす前提が板のような形になりやすい粘土では無理があると述べ、砂の粒ならおおむね妥当だとします。粒が落ちはじめてすぐ終端速度に達すると見なす近似についても、この種の問題では受け入れられると条件つきで置きます。式は前提ごと持ち歩く道具で、外れれば答えも外れる、という扱いです。

赤く濁った池: 最後に動画は、身のまわりの見えかたへ戻します。粘土を多く含む土が浸食で流れ込んだ池が赤みやオレンジ色を帯びて見えるのは、粘土ほどの粒は1m沈むのに51日かかるからだと述べ、話者の住むオクラホマではその色の池をよく見る、と結びます。落ちる速さの差が、濁りの残りかたとして目に見えているという説明です。

霧に置きかえると: 扱っているのは水の中を沈む土の粒で、空気中の霧は出てきません。それでも粒の径から落ちる速さを出し、落ちる距離で割って時間にするという手順そのものは、この項目が霧について知りたいことと同じ形をしています。落ちる粒と浮く粒の分かれ目もここにあり、径が一桁違うだけで沈む時間が二桁変わる、という読み方につながります。