栽培空間をCFDで解く
計算と実験
CFDは空間を細かく割って、流れを数値で解く方法です。格子の細かさと乱流の扱いで答えが変わるため、検証と妥当性確認が別に要ります。
何を決めるための考え方か
霧と空気が棚のどこをどう通るかを、作る前に数値で見積もるための道具です。送風機の位置や棚の割りつけを変えた案を並べ、株のまわりの風速の帯や霧が片側にしか届かないの起きかたとして比べられます。答えは格子の切り方と乱流モデルと境界条件で動くので、出てきた絵をそのまま実物だとは読めません。決められるのは案の優劣までです。
何を計算・計測するか
質量と運動量の式を格子ごとに解き、風速をm/s、圧力をPa、粒の軌跡を粒径μmごとに追います。霧は空気とは別の相として入れ、落ちる粒と浮く粒の分かれ目を粒径分布から与えます。根の塊は一本ずつ形どらず、根の塊を多孔質として扱うやり方で抵抗の係数に置き換えます。格子を段階的に細かくする作業が先に要ります。
つまずくところ
格子を細かくしたときに値がどこへ寄るかを見ないまま、出た数字をそのまま設計値に使うところです。Roache 1994 の格子収束指数は、粗い格子と細かい格子の差から、まだ残っている数値誤差の幅を見積もるためのものです。式を正しく解けているかを見るのが検証、現実と合っているかを見るのが妥当性確認で、この二つは別の作業です。
どこまで確かめられているか
検証と妥当性確認の切り分けは Eça ら 2022 が ASME の規格について整理していて、妥当性確認は合否ではなくモデル誤差の推定だと書いています。農業側では Majdoubi ら 2009 が1ヘクタールの温室で実測と計算を突き合わせました。噴霧栽培の根の場で確かめた計算例は見当たりません。
解説動画: ANSYS Fluent: Mesh Independence Study | Tutorial/CFDKareem
誤差を種類で分ける: 動画はまず、計算に混じるずれを分類するところから始めます。AIAAの1998年の定義で、誤差は自分の設定で制御できる欠陥、不確かさは知識の不足から来る欠陥。そのうえで離散化・丸め・反復の収束・物理モデル・人の手による誤差を並べ、今回扱うのは最初の二つだと断ります。
格子を細かくすると: 離散化誤差はテイラー展開の打ち切りから来るので、格子を小さくするほど下がります。ところが計算の回数が増えるぶん、丸め誤差のほうは積み上がって増えます。動画は数を何桁保つかで丸めの出かたが変わることにも触れ、両者が逆を向くグラフを見せて、格子の細かさを決める作業とはこの二つの釣り合いを取ることだと述べます。
値が動かなくなる点: 格子独立とは、格子を細かくしても解が変わらなくなった状態を指します。手順は、粗い格子から始めて見る量を一つ決め、要素の大きさを半分にしては解き直すを繰り返して並べること。動画は平行な2枚の板のあいだの層流を例にとり、解析解の最大流速0.015m/sと突き合わせます。
どこで止めるか: 要素数は250から64,000まで増え、誤差は0.03%まで下がりますが、計算時間は2秒から105秒へ伸びます。動画が選ぶのは16,000要素・誤差0.12%・23秒で、これ以上細かくしても値はほとんど動かないという判断です。大きな3次元では時間が日や週に膨らむ、とも付けます。
信じてよいか: 最後に動画が置くのはその結果を信じてよいかという問いです。解と残差が収束しているかを見直し、流体の設定に無理がないかを確かめ、技術者の目で妥当かを判断する。扱っているのは平板のあいだの流れで栽培空間は出てきませんが、株のまわりの風速の帯のような見る量を先に決めてから格子を振る、という順は変わりません。