米の科学図鑑

糊化(α化)(でんぷん)

生のでんぷんが水と熱を受け、結晶の並びがほどけて水を抱え込み、粘りのある状態へ変わる現象です。この変化そのものが炊飯の本体で、吸水で米粒の内部まで水が届いていないと中心は糊化しきりません。でんぷんは水分30%以下では均一に糊化せず、胚乳のでんぷんが米のタンパク質に包まれている米では、さらに多くの水が要るとされています。

老化(β化)(でんぷん)

糊化でほどけたでんぷんの鎖が、時間とともに再び並び直して水を放し、硬くぼそついた状態へ戻る現象です。糊化(α化)と逆向きの変化で、冷蔵庫のごはんが硬いの正体にあたります。失われているのは水そのものではなく、水を抱えていた構造のほうで、温度を60℃以上へ戻すと粘りはある程度戻ります。味の劣化全体を指す語ではありません。

アミロース(でんぷん)

でんぷんを作る2種類の分子のうち、枝分かれのない直鎖のほうです。残りは枝分かれの多いアミロペクチンで、うるち米では17〜23%がアミロースとされます。農林水産省は多いほど米飯が硬く粘りが少なくなると説明しており、老化(β化)の進みやすさにも関わります。測るにはヨウ素比色法によるアミロース定量が使われます。…

レジスタントスターチ(でんぷん)

小腸で消化されにくいとされるでんぷんの呼び名です。米飯では、糊化(α化)したでんぷんが冷える過程で鎖が並び直したものが該当し、老化(β化)と同じ変化を消化の側から呼んだものにあたります。つまり硬くなるという食感の話と、体に入る側の話が、同じ現象の裏表になっています。名前が違うだけで別の物質があるわけではありません。

吸水(水と熱)

洗った米が水を取り込んで膨らむ現象で、浸す工程で進み、糊化(α化)に必要な水を米粒の内部まで届けます。檜作進の実測では20℃の水に2時間おくと米の重さの20〜30%を吸い、最初の30分でその約65%に達するとされています。乾いた米ほど最初の勢いが強く、時間が経つほど速さは落ちます。浸けている間に見えるのは…

水分の均一化(水と熱)

加熱を終えた直後、米粒の周りに残っている水が内部へ移動し、粒の間と粒の中の偏りがならされる現象です。檜作進は10〜15分のこの過程を炊飯の必要条件とし、老化(β化)を遅らせることに有効だと書いています。蒸らすという工程が指しているのはこの時間で、待つこと自体ではなく水が動くことが中身になります。待ち時間ではなく…

水の硬度(水と熱)

水に溶けているカルシウムとマグネシウムの量を表す値です。炊飯では、カルシウムが米の細胞壁のペクチンと結び付いて吸水を妨げるという機構が説明されており、炊飯には軟水でなければいけないという言い方の根拠として持ち出されてきました。硬度そのものは味ではなく、水に何がどれだけ溶けているかを表す数値です。日本の水道水は…

炊飯水のpH(水と熱)

炊く水が酸性かアルカリ性かの度合いです。pHが高い水では米に含まれるフラボノイドが反応して黄色みが出るとされ、メーカーはpH9未満の水を使うよう案内しています。アルカリイオン水で炊くとおいしいという説は、この案内の外側に触れる話で、水の硬度とはまた別の軸になります。整水器の設定で動く値でもあります。…

ヘキサナール(におい・色)

古米のにおいのもとになる物質の1つです。農林水産省は、貯蔵中にリパーゼが中性脂質をグリセリンと遊離脂肪酸に分解し、それが酸化分解を経てペンタナールやヘキサナールとなることが古米臭の原因になると説明しています。研ぐときからにおうの中身がこれにあたり、ぬかが残っていて炊いたごはんがにおうほうとは別の話です。…

脂肪酸度(におい・色)

米の脂質が分解されてできた遊離脂肪酸の量を表す値です。貯蔵中にヘキサナールなどのにおい成分ができるのと同じ反応で増えるため、古米化がどこまで進んだかを示す指標として使われます。表しているのは味ではなく貯蔵で起きた変化の量のほうで、研ぐときからにおうを数値の側から見た項目にあたります。値そのものは…

メイラード反応(におい・色)

糖とアミノ酸が結び付いて褐色の物質ができる反応です。保温を続けた米飯が黄色みを帯び、においが変わる原因とされ、黄色くなったの説明として挙げられます。老化(β化)とは別の反応で、温度を上げても止まらず、保温する間はむしろ進みます。焼き色や香ばしさが付くのも、同じ反応の側にあります。保温をやめない限り…

ぬか層(米の構造)

玄米の表面を覆う層で、ビタミンやミネラルのほか、リン・カリウム・マグネシウムなどの無機質を多く含みます。檜作進は、糠に多いこれらの無機質がでんぷんの糊化(α化)と膨潤を抑え、老化(β化)を促進することを実験で示しています。糠を落とすことには、においだけでなく炊き上がりの物性の面もあります。白米に残っているのは…

米のタンパク質(米の構造)

胚乳の中ででんぷんを包んでいる成分です。農林水産省は、日本の炊飯が少ない水で炊き切る炊き干し法であるため、でんぷんとタンパク質が少量の水を取り合い、含量が高い米ではでんぷんの吸水と糊化(α化)が妨げられると説明しています。味そのものではなく、水の奪い合いを通じて効いてきます。含量そのものは…

無機ヒ素(米の構造)

土壌から米に移る微量成分です。ぬか層の部分に多く含まれるため、精米すると濃度が下がります。農林水産省の令和4〜6年産の調査では、玄米で平均0.13mg/kg・最大0.37mg/kg、精米で平均0.09mg/kg・最大0.23mg/kgと報告されています。玄米は白米より無機ヒ素が多いが指しているのはこの差です。…

芽胞(微生物)

一部の細菌が作る、熱や乾燥に強い休眠状態の構造です。ボツリヌス菌の芽胞を死滅させるには120℃で4分以上、またはこれと同等の加熱が必要とされ、100℃程度では長い時間をかけても殺菌できません。炊飯器にまかせる温度でも保温する温度でも死なないので、菌そのものとは別に数える必要があります。食品によっては…

浸漬中の細菌増殖(微生物)

米から水へ溶け出した糖やアミノ酸を養分にして、浸けている水の中で細菌が増える現象です。新潟大学の大坪研一教授が監修した解説では、夏場に炊飯器の中で長時間放置したときに起こりうるとされています。浸す時間と水温を選ぶ判断がそのまま関わり、水の温度が高いほど条件はそろいます。水の中で起きていることなので…

登熟(米の構造)

穂が出てから収穫までの、粒にでんぷんがたまって実が太る時期のことです。この間の気温と日射が、粒の中身の作られ方を決めます。アミロースは登熟期の気温が高いほど下がる方向に動くとされ、米のタンパク質は施肥と天候で動きます。品種の名前が同じでも、年と場所でこの時期の条件が違います。この時期の気温は…