ヘキサナール

におい・色

米の脂質がリパーゼで分解され、遊離脂肪酸が酸化する過程で生じます。ヘキサナールは古米のにおいのもとになる物質の1つで、ペンタナールとともに生じると農林水産省は説明しています。

何が起きているか

古米のにおいのもとになる物質の1つです。農林水産省は、貯蔵中にリパーゼが中性脂質をグリセリンと遊離脂肪酸に分解し、酸化分解を経てペンタナールやヘキサナールとなり古米臭の原因になると説明しています。三宅剛史ら2012は精米歩合70%の古米から11種の臭気成分を検出し、ヘキサナールが総臭気量の約45%を占めたと報告しています。研ぐときからにおうの中身がこれにあたり、ぬかが残っていて炊いたごはんがにおうほうとは別の話です。

何によって変わるか

貯蔵の期間と温度で進みます。低温貯蔵の条件は15℃以下・湿度70〜75%とされ、常温で置くほど進みます。脂肪酸度は同じ過程で増える遊離脂肪酸を測る古米化の指標です。米を保存する場所の選び方が効き、米は冷蔵庫の野菜室で保存するという説もこの温度の話です。Haら2026は、脂質の酸化に関わる酵素リポキシゲナーゼ3を欠く新品種が、比べた品種より15℃でも30℃でもヘキサナールが低く推移したと報告しています。

よくある勘違い

「古米は水分が抜けるからにおう」という言い換えは誤りです。においの由来は脂質の分解と酸化で、水分含量とは別の過程です。古米はにおいでわかるは方向として成り立ちますが、分かるのは貯蔵の進み具合までで、新米のほうが古米よりおいしいという順位の話とは別です。貯蔵耐性の異なる4品種を6か月置いたZhuら2025では、ヘキサナールと2-ペンチルフランが風味変化の主な揮発成分とされ、変化の大きさは品種で分かれました。

台所での意味

においが気になるときに見直すのは、炊き方より保存の条件です。米を保存する温度を下げること、買う量を減らして短い期間で使い切ることが直接関わります。袋では精米時期と産年が貯蔵の長さの手がかりです。米びつの米がにおうときは、容器の側も合わせて確かめます。三宅剛史ら2012は、精米歩合70%の古米を水に2時間浸すとヘキサナール臭気量が約4割減ったと報告しますが、酒造用の原料米での実験で、家庭の洗米とは条件が違います。

出典

  1. 公的機関 農林水産省 米の貯蔵中の変化、低温貯蔵効果
  2. 論文 三宅剛史ら(2012) 食塩水を用いた洗米による脂肪酸および古米臭の低減
  3. 論文・英語 Zhu Dら(2025) Effects of storage on volatile organic components and physiological properties of different storage-tolerant rice varieties
  4. 論文・英語 Ha SKら(2026) Evaluation of agronomic traits and storage stability in novel rice cultivar 'Baromi3' combining floury endosperm and lipoxygenase 3 deficiency