薄い・苦い・渋いの原因と、最初に直す1か所。
薄い・苦い・渋いは別々の失敗ではなく、過抽出と未抽出という1本の軸の両端に並びます。粉や茶葉から成分が出きっていなければ薄く、酸っぱく感じ、出すぎれば苦みが立ち、口が乾くような渋みが残ります。最初に見るのは、注ぎ方や湯温ではなく、粉と湯の量の関係です。
浅・中・深の3つの焙煎度で、ドリップの濃さと抽出率を9通りに振った実験では、評価した30の特性のうち21が有意に変わりました(カリフォルニア大学デイビス校)。濃さと抽出率をそろえてしまうと、87〜93℃の湯温の差は官能評価にほとんど出ませんでした(同校)。同じ大学は1950年代の抽出管理図を作り直し、濃さと抽出率を選べば狙った味を設計できるとまとめています。温度計や注ぎ方より先に、粉量と湯量の比率をはかりで決めるほうが効きます。
比率を決めて2〜3杯淹れてもまだ薄いなら、次に動かすのは挽き目です。粗く挽くほど湯が速く抜けてさっぱりし、細かく挽くほど濃く出ます(珈琲豆 山倉)。粒の大きさがそろわないことも、雑味やえぐみの元になります(同チャンネル)。エスプレッソの粉に、ふるい分けた微粉を足して割合を変えた実験では、100マイクロメートル未満の微粉が増えるほど粉の層が湯を通しにくくなり、流量が落ちて抽出時間が延びました(チューリッヒ応用科学大学)。
渋みは味ではなく、口の中が収れんする触覚です。コーヒー液を画分に分けて官能評価にかけ、渋みを感じる画分を質量分析で調べた研究では、フェノールに富むメラノイジンという褐色の高分子が見つかり、コーヒーに含まれる濃さでも渋みを感じたと報告されています(オハイオ州立大学)。茶で感じるお茶のカテキンの渋みはカテキンによるもので、湯温を下げるほど出にくくなります。
沸かしたての湯をそのまま注ぐと、湯温が高すぎたときの雑味が出やすくなります。沸騰した湯を2分ほど置いて90〜93℃にするだけでも味は変わります(珈琲豆 山倉)。茶はもっと低く、湯温が低いほどうま味のアミノ酸が多く出て渋みと苦みは減るため、煎茶は70〜80℃、玉露は40〜60℃が目安です(京都府の宇治茶の公的な手引き)。茶が渋いときは、茶葉の量より先に湯温を下げ、急須に湯を残さず最後の一滴まで絞り切ります。
淹れ方を直しても味が平らなままなら、豆のほうを疑います。真空包装した焙煎豆を訓練した評価者10人が30の特性で評価した研究では、焙煎後9か月で好ましい香りと風味が弱まり好ましくない特徴が有意に強まり、18か月では酸化を示す酸敗の香りと味がはっきり感じられました(ウィーン大学)。古い豆の味(劣化・酸敗)は淹れ方では戻せないので、2週間ほどで飲み切れる量に買い替えます(珈琲豆 山倉)。
器具を買い替える前に、淹れ方ごとの向きを知っておくと迷いが減ります。ハンドドリップは変えられる要素が多いぶん、毎回同じ味を出すのが難しく、金属の網で濾すフレンチプレスは重い口当たりの豆に向き、カップの底に細かい粉が残ります(NYT Wirecutter)。薄い1杯が続くなら、器具より先に比率と挽き目を直します。
紙のにおいが鼻につくときは、粉を入れる前にペーパーフィルターへ湯を通しておくと紙のような味が出にくくなります。この湯通しは、紙のにおいが気になったときだけで足ります(備長炭フルシティロースト)。どれを直すときも、一度に動かす数字は1つに絞ります。粉の量と挽き目と湯温を同時に変えると、効いた箇所が分からなくなります。
出典
- 論文・英語 Frost SC, Ristenpart WD, Guinard JX(カリフォルニア大学デイビス校)(2020) Effects of brew strength, brew yield, and roast on the sensory quality of drip brewed coffee
- 論文・英語 Batali ME, Ristenpart WD, Guinard JX(カリフォルニア大学デイビス校)(2020) Brew temperature, at fixed brew strength and extraction, has little impact on the sensory profile of drip brew coffee
- 論文・英語 Guinard JX, Frost S, Batali M, Cotter A, Lim LX, Ristenpart WD(カリフォルニア大学デイビス校)(2023) A new Coffee Brewing Control Chart relating sensory properties and consumer liking to brew strength, extraction yield, and brew ratio
- 論文・英語 Linne BM, Tello E, Simons CT, Peterson DG(オハイオ州立大学 食品科学技術学科)(2025) Chemical characterization and sensory evaluation of a phenolic-rich melanoidin isolate contributing to coffee astringency
- 論文・英語 Smrke S, Eiermann A, Yeretzian C(チューリッヒ応用科学大学 Coffee Excellence Center)(2024) The role of fines in espresso extraction dynamics
- 論文・英語 Kreuml MT, Majchrzak D, Ploederl B, Koenig J(ウィーン大学 栄養科学部)(2013) Changes in sensory quality characteristics of coffee during storage
- 公的機関 宇治茶世界文化遺産登録推進プラットフォーム事務局(京都府農林水産部内) お茶のおいしい淹れ方
- 動画 珈琲豆 山倉(旧KONA SNOW Coffee Roasters。焙煎所の動画で、自店の豆を売る利害がある) 【理由が分かる】お家で淹れたコーヒーが美味しくなかった時に見直す5つのポイント【好み・鮮度・挽き方・淹れ方・器具】
- 動画 備長炭フルシティロースト 【スケール不要】簡単な美味しい淹れ方|これからコーヒー始める全員へ【ノーカット抽出】【ラクに楽しく】
- 動画・英語 NYT Wirecutter(新聞社の製品評価部門) French Press vs AeroPress vs Pour-over and More: Coffee Methods Compared













