スパイス

味わう

粉の一振りで、料理の国籍が変わる

どんな趣味?

瓶から粉を出し、油で温め、香りが立った瞬間に具を入れる。同じ鶏肉でも、クミンなら中東の味に、山椒と八角なら中国の味になります。粒のまま煎って自分で挽くと香りがまるで違うと気づくと、料理そのものより香りを扱っている感覚になってきます。一皿につき数分の作業で、食卓の景色が変わります。

始めるのに要るもの

まずは粒のクミンと、粉のコリアンダー、ターメリック、チリの四つで十分です。小袋でそろえても合計1500円前後です。粒を挽く小型のミルやすり鉢は1500円から3000円で、あると香りが一段変わりますが、最初は粉のままで構いません。保存用の密閉瓶は100円台のもので足ります。

最初の一歩

今週末、輸入食品店かスーパーのスパイス棚で、粒のクミンをひと袋だけ買ってください。フライパンに油を薄く引き、弱火で粒を温めて香りが立ったところで玉ねぎを入れます。それだけで、いつもの炒め物が別の料理になります。所要は5分です。粉のクミンでも同じことをして、香りの残り方を比べると違いが分かります。

続けるとどうなるか

香りの系統が頭に入ると、レシピを見なくても味の方向を先に決められるようになります。冷蔵庫の残り物で一皿を組み立てられるようになるのが、この趣味のいちばんの実利です。ミックスを自分で配合する人、産地や品種を追う人、発酵・自家製調味料やカレー作りの方へ広がる人と分かれ、料理全体の解像度が上がっていきます。

向き不向き・注意

買った瓶を使い切れないのが最大の落とし穴です。粉は開封から半年ほどで香りが抜け、棚に瓶だけが増えていきます。香りが強いので、保存場所によっては他の食品に匂いが移ります。唐辛子の類を扱った手で目をこすると痛い思いをしますし、辛味の許容量は家族の中でも大きく違います。健康効果をうたう情報も多く出回りますが、そこは慎重に見てください。

解説動画: 家に常備したいハーブ・スパイスと料理別の使い分け/Chef Ropia料理人の世界

概要: 家にどんなハーブを用意すればいいか、どう使えばいいかという質問に答える形で、料理人が自宅にあるハーブとスパイスをひと通り並べて説明している。そこからまず優先して置きたいものを選り分け、残りは料理との相性を1つずつ挙げていく流れ。最後に、どう買い足していけばいいかという揃え方の考え方まで話している。

まず置きたいもの: 最初の1軍として挙げているのはブラックペッパーとホワイトペッパー、ローリエ、鷹の爪、乾燥バジル、パセリ。胡椒はパウダーより粒をミルで挽いたほうが香りがよいとしている。ローリエと鷹の爪は煮込みやトマトソース、パスタで出番が多い。乾燥パセリはフレッシュとは香りも色鮮やかさもかなり違うので、あってもなくてもいいが、あれば使いやすいという位置づけで話している。

料理別の使い分け: シナモンはスティックとパウダーがあり菓子系に、セージは煮込みや肉料理に、ターメリックはカレーやライスの色付けに使う。ナツメグはハンバーグの印象が強いがひき肉や肉料理全般と相性がよい。クローブは煮込みで玉ねぎに刺して使う。クミンシードはカレーに欠かせず、ホールのままでも刻んでも使える。ディルシードは魚やポテトサラダ、キャラウェイはクッキーやコールスローにも。乾燥のコリアンダーは生だとパクチーにあたるものだと説明している。

やりがちな誤解: オールスパイスはミックススパイスだと思われがちだが、そういう名前の単一の品種で、ハンバーグやソーセージ、ロールキャベツなどに使いやすいとしている。ピンクペッパーも名前にペッパーと付くが、ブラックペッパーやホワイトペッパーのような胡椒とは別物だと補足している。

揃え方: 一度に全部覚えるのは難しいので、作りたい料理から必要なものを1つずつ買い足していけばいいとしている。ハンバーグを作るならナツメグとクミンを買ってみる、といった進め方で、食材との相性や自分の好きな香りは実際に使いながら確かめるもの。レストランと家庭で同じように作っても味が違う理由の一つが、こうした香辛料の使い方だと話している。