手本と自分の声を、聞き比べて直す。
録って比べる練習は、言っている最中には聞き取れない自分の音を、聞き手の耳で聞き直すためのものです。自分の耳だけで判定すると、ずれが大きくなります。ポーランドの大学生17人が、2学期の発音の授業の前と後の録音を聞き比べて上達を判定した調査では、96語のうち学生と教師の判定が平均14語食い違い、上達を多く見積もる学生と少なく見積もる学生の両方がいました(Gralińska-Brawata 2022)。比べるときは全体の印象で決めず、お手本と並べて1か所ずつ聞きます。
手順は4段です。お手本を2回聞き、同じ語を言って録り、お手本・自分・お手本の順に続けて聞き、違った所を1つだけ決めて言い直します。1回に見る所は、長さ・強く読む音節・1つの音のどれか1つに絞ります。絞っておくと、言い直しで何を変えるかがはっきりします。録るのは1語か短い句からで、長い文を丸ごと録るのは、1語で違いが聞こえなくなってからです。
このアプリの図鑑の「聞く・言う」も同じ流れの練習です。マイクを入れたまま言い直すと1回ずつ切り分けられ、お手本の波形の下に並びます。波形で比べられるのは、長さ・音の山の数と位置・声の高さの上がり下がりで、カタカナ読みで母音が増えると波形は必ず長くなります。/æ/と/ʌ/のような母音の音色の違いは波形の形に表れないので、耳で聞き比べます。声の高さの線は、文の抑揚を合わせるのに使えます。フランス語を学ぶ英語話者が、話者の手本と自分の声の高さの線を見比べる練習を3週間続けると、抑揚が良くなり、練習していない文と個々の音の正確さにも効果が広がりました(Hardison 2004)。
録る道具は、毎回の条件をそろえるために選びます。机で録るならUSBマイク(単一指向性)で正面の声だけを拾い、部屋の反響を減らします。ポップガードは、p・bの息がマイクに当たる「ボッ」という音を防ぎ、語頭のpの息が強く出たかを聞き分けられるようにします。マイク付きヘッドセットは録音の質では据え置きのマイクに劣りますが、口との距離が変わらないので、録るたびの音量がそろいます。聞き返しは有線イヤホン(カナル型)か密閉型ヘッドホンで行い、語末のt・d・sのような弱い音まで聞きます。アプリの録音は画面を離れると消えるので、週をまたいで並べたい録音はICレコーダーに残します。
できあがりは、お手本・自分・お手本と続けて聞いて、決めた1か所の違いが聞こえなくなった状態です。そこまで来たら、見る所を次の1か所に移します。やりがちな失敗は、録っただけで聞き返さないことと、毎回違う所を言い直すことです。骨伝導ヘッドホンは細かい子音の差が出にくいので、聞き比べには使いません。
出典
- 論文・英語 Gralińska-Brawata A(2022) Polish learners’ self-assessment and reflections on their pronunciation progress
- 論文・英語 Hardison DM(2004) Generalization of Computer Assisted Prosody Training: Quantitative and Qualitative Findings






