1か所だけ違う語の組で、聞き分け・言い分ける。
似た音の練習は、1か所だけ音が違う2語の組(ミニマルペア)で進めます。shipとsheepは母音が1つ違うだけで、ほかの音は同じです。違う所が1つしかないので、聞き分けられたか・言い分けられたかが、その音だけで決まります。組を選ぶ・2択で聞く・言って確かめる・文に入れる、の4段で進めます。
組は、取り違えると意味の変わる語が多い対から選びます。/iː/と/ɪ/、/l/と/r/は、英語の対の重要度(機能負担)を並べた2つの表のどちらでも上位にあります(Sewell 2021)。中国語話者の英語を日本の大学生171人が聞き取った実験でも、重要度の高い対を取り違えた語ほど聞き取られにくく、取り違えが重なるとさらに下がりました(O'Neal・Latham 2023)。最初の組は/l/と/r/(lightとright)、/iː/と/ɪ/(sheepとship)にし、日本語話者が同じ「ア」にしやすい/æ/と/ʌ/(catとcut)を続けます。/uː/と/ʊ/(poolとpull)のように重要度の低い対は、あとに回します。
聞く段では、「同じか違うか」より一歩進めて、聞こえた語がどちらかを2択で答えます。答えは毎回すぐ確かめ、声の違う複数の話者で聞きます。複数の話者の声で/r/と/l/の2択の聞き取りを続けた日本語話者は、聞き取りが上がっただけでなく、練習の前より英語話者に聞き取られやすい発音になっていました(Bradlow ら 1997)。
ただし、聞く練習だけで言い分けまでは仕上がりません。聞き取りの練習が発音に及ぼす効果を31の研究でまとめると、発音の伸びは練習した語で平均10.5%、練習していない語で4.5%で、1回の練習時間が長いほど伸びは小さくなりました(Uchihara ら 2024)。聞く段は短く切り上げ、言う段を別に置きます。組の2語をカードの裏に書き、伏せたまま1枚選んで言い、家族に書き取ってもらうか、録音して翌日に聞き、どちらの語に聞こえるかを書きます。選んだ語と書いた語が10回続けて合えば、次の段に進みます。図鑑の/l/と/r/の「聞く・言う」で、2語のお手本をそれぞれ聞いてから録ると、比べる相手が耳に残った状態で言えます。
文に入れる段では、組の語を同じ文の同じ位置に置きます(I saw a ship. と I saw a sheep.)。前後の音が付くと、1語のときにできていた区別が崩れることがあります。できあがりは、文の中で言っても聞き手が取り違えない状態です。/iː/と/ɪ/を長さだけで分けると、速く話した文の中で区別が消えます。sheepは唇を横に引いて舌を高く、shipは力を抜いて少し「エ」寄りに、と口の形でも分けておきます。
出典
- 論文・英語 Sewell A(2021) Functional Load and the Teaching-Learning Relationship in L2 Pronunciation
- 論文・英語 O'Neal G, Latham L(2023) Does the Functional Load Principle Predict How Important Phonemic Contrasts Are to Intelligibility Among ELF Users? A Partial Replication of Munro and Derwing (2006) From an ELF Perspective
- 論文・英語 Bradlow AR, Pisoni DB, Akahane-Yamada R, Tohkura Y(1997) Training Japanese listeners to identify English /r/ and /l/: IV. Some effects of perceptual learning on speech production
- 論文・英語 Uchihara T, Karas M, Thomson RI(2024) Does perceptual high variability phonetic training improve L2 speech production? A meta-analysis of perception-production connection