言われている数字図鑑

土耕の10倍の収量が出る?(収量と成長の説)

10倍という数字は、何と比べたかで決まります。FAOの資料そのものは10倍と書いておらず、施設と露地を1作あたりで並べた集計では2倍ほどにとどまります。「アクアポニックスなら同じ面積で土耕の10倍とれる」という一文が、紹介記事や設備の案内でくり返し使われます。比べた相手が露地なのか施設なのか…

魚と野菜のつり合いは餌の量で決まる?(収量と成長の説)

魚の匹数ではなく、1日の餌の量で栽培面積が決まります。同じ匹数でも魚が大きくなれば餌は増えるので、数える相手が違います。「魚が何匹なら野菜が何株」という覚え方が広く出回っています。一方で設計側の資料は匹数を使わず、1日に入れる餌の重さで栽培面積を決めると書きます。この比は給餌率比と呼ばれ…

野菜が2倍の速さで育つ?(収量と成長の説)

収穫までの日数を土耕と並べて測った資料が見当たりません。比較されているのは多くが収量で、しかも相手は土ではなく水耕です。「土で1か月半かかる葉物が、アクアポニックスなら半分の日数で穫れる」という言い方をよく見かけます。添えられる説明は、根が水の中の養分に直接ふれるから生育が早いというものです。…

水耕栽培より育ちがよい?(収量と成長の説)

養分を補った条件では、水耕を上回った報告があります。魚の水をそのまま使った条件では下回ることもあり、何を足したかで結果が入れ替わります。「魚の水には微生物と有機物が入っているから、肥料だけの水耕より根が張って育ちがよい」という言い方があります。生きている水と、ただの養液という対比で語られ…

水槽ひとつで家族の野菜をまかなえる?(収量と成長の説)

家庭規模で何割まかなえたかを測った資料が見当たりません。必要な面積は餌の量から概算できますが、食卓の自給率として測った例は確認できていません。「ベランダの水槽ひとつで、家族が食べる葉物はまかなえる」という誘い方をよく見ます。魚を飼うついでに野菜がついてくるという言い回しで語られ、何人分なのか、何割なのかは書かれません。…

水の使用量が9割減る?(水と資源の説)

9割は、水を入れ替える魚の養殖と比べたときの数字です。土で育てる場合と比べた記述もありますが、循環式の水耕を相手にすると差はほとんど残りません。「アクアポニックスは畑の10分の1の水で育つ」「従来の農業より90%の節水になる」という書き出しが、入門記事や案内の先頭に置かれます。FAOの資料にも…

肥料は魚のフンだけで足りる?(水と資源の説)

カリウム・カルシウム・鉄は不足することが測られています。魚の餌は魚のための配合で、植物が要る量のこれらを含んでいないからです。「魚がえさを食べてフンをすれば、それが肥料になる。ほかには何も要らない」という説明が、矢印の図とともに置かれます。窒素が餌から入ってくるのは確かで…

水は減った分を足すだけでよい?(水と資源の説)

汚泥を抜くたびに水も出るので、入れ替えは起きています。足すだけで済んでいるように見えるのは、抜いた分を数えていないからです。「アクアポニックスは水を替えなくていい。蒸発した分を足すだけ」という言い方が、金魚の水槽や水耕との違いとして語られます。水は系の中を回り続けるので出ていかない、という理屈で…

魚が出した窒素はぜんぶ野菜が吸う?(水と資源の説)

餌に入った窒素のうち、野菜が取り込むのは一部です。残りは魚の体と汚泥に入り、水に残った分は硝酸としてたまっていきます。「魚のフンを野菜が吸ってくれるから、水はきれいなまま」「窒素は系の中で閉じている」という説明が、矢印の図とともに置かれます。魚から微生物へ、微生物から植物へ、植物から魚へと一周する絵は分かりやすく…

土で作るより環境の負担が小さい?(水と資源の説)

電気の使い方しだいで、負担は大きくも小さくもなります。公表されている評価の多くで、影響のほとんどを電気が占めています。「土を使わず農薬も撒かないから環境にやさしい」「水も養分も循環するので負担が小さい」という言い方が、紹介の締めに置かれます。資源が輪になって閉じているように見えることが、そのまま根拠にされます。…

魚がいると殺虫剤は使えない?(手間と経済の説)

薬の種類と撒き方によって、魚への届き方が変わります。植物由来・微生物由来の3種を葉に撒いた試験が1本あるだけで、広く効く合成殺虫剤は測られていません。「魚がいるから薬は一切使えない」「虫が出たら手で取るしかない」という言い方が、入門の案内でくり返されます。水がひとつながりなので…

一度立ち上げれば手入れは要らない?(手間と経済の説)

毎日の給餌と点検があり、手が離れる仕組みではありません。趣味で回している人の多くも、週に何時間かをこれに使っています。「はじめに組んでしまえば、あとは勝手に回る」「水換えが要らないので週末だけで足りる」という言い方を、入門の案内でよく見ます。魚のフンが肥料になり…

商売として成り立ちやすい?(手間と経済の説)

答えたのは、いま売っている人だけです。やめた人はアンケートに残らないので、割合を見ても続けやすさは出てきません。「魚と野菜が同時に穫れるので二重に売れる」「小さく始めて広げられる」という言い方が、事業の紹介や入門書に並びます。リーフレタスのような葉物と魚が同じ設備から出るので、両方の市場に出せるのが強みだ…

魚を入れる前に1か月ほど水を回す?(手間と経済の説)

水を回しているあいだ、菌の増え方は目に見えません。だから終わりは、カレンダーではなく試薬の色で決めることになります。「魚を入れる前に、1か月ほど水だけ回して菌をつくる」と、入門の手順書はそろって書きます。フィッシュレスサイクリングと呼ばれるやり方で、アンモニア源を足しながら数字が動くのを待ちます。…