一度立ち上げれば手入れは要らない?
手間と経済の説
判定: 測るとそうならない
毎日の給餌と点検があり、手が離れる仕組みではありません。趣味で回している人の多くも、週に何時間かをこれに使っています。
言われていること
「はじめに組んでしまえば、あとは勝手に回る」「水換えが要らないので週末だけで足りる」という言い方を、入門の案内でよく見ます。魚のフンが肥料になり、株が水をきれいにする——自然の輪をまねているから手がかからないという筋書きです。置いておけば育つという絵が添えられ、留守にしても平気と書かれることもあります。
誰が、何を、どう測ったか
Pattillo ら 2022(PLoS ONE)が、2019年12月から2020年6月にかけて378人から回答を集め、うち294人に週あたりの作業時間をたずねています。趣味・生産者・教育のどれかを自分で選ぶ形で、回答者の84%が米国。日課の中身は、FAO技術報告589(Somerville ら 2014)の管理表と突き合わせました。
測るとどうか
週10時間以下が全体のおよそ半分、11〜20時間が23%でした。趣味の人では71%が10時間以下で、生産者は50%が20時間超、20%が40時間超です。作業時間は魚と株を合わせた面積と中くらいの相関(ρ=0.532)があり、経験年数との結びつきは弱いものでした。手が離れた人の割合は、この調査では聞かれていません。
どう言えば正しいか
「手が離れる」ではなく「週に何時間かで足りる」です。FAO 589 が日課に挙げるのは、ポンプと流れと水位の確認、1日2〜3回の給餌と食べ残しの回収、沈殿槽からの固形物の抜き取り。週課は、給餌前にpHと総アンモニア態窒素(TAN)と亜硝酸と硝酸を測ること。月に一度は生物ろ材と槽の底の掃除が入ります。
解説動画: Aquaponics Vlog: Isnt It Hard To Maintain an Aquaponics System?/Jeff Davidson
毎日どれだけか: アクアポニックスをしていない人から最も多く来る問いは毎日の手入れにどれだけ時間がかかるのかで、相当な手間がかかるはずだと思われている、と動画は切り出します。そこで言葉で答えるかわりに、いつもの朝の見回りをそのまま撮って見せる形を取りました。系を始めて半年になろうとするころの記録です。
朝いちばんの見回り: 最初は槽のふたを開けて浮いている魚がいないかを見るところから。一晩で何匹も死んでいたに気づけるのはここです。次に手で餌をやり、小さい個体の槽には粒の細かい餌を入れます。集水槽をのぞいて水位を保つ弁と流れを確かめ、枯れ葉を抜き、立ち上がり管の何本かで水が出ているかを見ます。
数えると1日10分: 撮れた映像は3分30秒、同じことを夕方にもう一度やるので合わせて6分ほど、切り上げて1日10分だと動画は数えます。見積もりではなく、撮った映像の長さをそのまま足した数です。日によって鉄(Fe)や海藻の液を足す作業が入りますが、これも数分。収穫の手間はこれとは別に積み上がる、と付け加えます。
草取りは無く餌は毎日: 土の菜園と比べてひざをついて草を取る時間が無いのが大きく、虫の害も大きな問題にはなっていないと述べます。ただし餌やりだけは毎日ついて回り、かかる時間は系の大きさでも変わる。時間を食ったのはむしろ組み立てているあいだのほうで、そちらには1日に数時間をあてたと振り返ります。
壊れるものは壊れる: この日は一つのバケツから水があふれていました。塩ビ管と継手のエルボが上を向いて根がつまっていただけで、管を少しずらすと30秒で直っています。動かす部品がある以上こうしたことは起き、直すには時間がいる——数は慣れるにつれて減ると結びます。手が離れるのではなく、短い見回りが毎日続く形です。