野菜が2倍の速さで育つ?

収量と成長の説

判定: 測った資料が見当たらない

収穫までの日数を土耕と並べて測った資料が見当たりません。比較されているのは多くが収量で、しかも相手は土ではなく水耕です。

言われていること

「土で1か月半かかる葉物が、アクアポニックスなら半分の日数で穫れる」という言い方をよく見かけます。添えられる説明は、根が水の中の養分に直接ふれるから生育が早いというものです。そこから年に回せる作の数が増えるという話へ続きますが、何日が何日になったのかは書かれていません。もとの日数が示されないので、半分になったのかどうかを確かめる足がかりがありません。

誰が、何を、どう測ったか

探したのは、同じ品種を同じ場所で土と並べ、播種から収穫までの日数を測った資料です。見つかりませんでした。比較試験はどれも収穫日を先に決めて重さを比べる作りになっていて、Delaide ら 2016 は3処理とも定植から36日、Monsees ら 2019 は3処理とも7週間、Curci ら 2026 は3系とも45日で揃えています。

測るとどうか

日数を並べた数字は、リーフレタスを集めた施設栽培のまとめにしかありません。Gargaro ら 2023 は収穫までが平均40日、94%の論文が70日以内とし、露地の一般的な60〜120日と比べています。ただしこれは別々の研究の栽培期間を並べたもので、光も温度も屋根の有無も同時に違います。魚の水の分だけを取り出すことはできません。

どう言えば正しいか

速いと言うかわりに、同じ日数でどれだけ重くなったかで言うのが、いまある測り方に合っています。早さの理由として挙がるのは屋根と光と水温、それに雑草と乾きが無いことで、魚由来という部分を切り分けた測定はありません。土耕の10倍の収量が出る?と同じ注意が要ります。日数を縮めたいなら、まず水温と光の当たり方を記録するところからです。

解説動画: Aquaponics vs Soil 🤜🏾 🥊 Which Grows Faster? | Ask The Aquaponics God Ep6/The School of Aquaponics

速さを問われる: 動画は「アクアポニックスの野菜は土より速く育つのか」という視聴者からの質問に答える回です。答えを先に置いて、速くは育たないと言い切ります。理由を、収量も収穫までの日数もその株が親から受け取った遺伝で決まっているところに置き、そこから話を組み立てます。土の側が速いという話でもない、とも断ります。

遺伝が日数を決める: 例に出すのは、レタスが成熟まで55日という遺伝の設定です。動画は、どんな養分も添加物も栽培法もその設定を上書きはしないと述べます。人が遺伝子を組み換えて背丈や収量を変える技術に手を出しているのは、栽培のやり方の側からはそこが動かせないからだ、と続けます。育て方で日数が縮むなら、そもそもその技術は要らないはずだ、という筋です。

栽培にできること: では栽培は何をしているのか。動画は、株が持っている力を出しきれる環境を用意することだと言い直します。挙げるのは根まわりの水温とpH、養分がいつでも足りていること、それにストレスの少ない温度と湿度です。アクアポニックスはそれをよく用意できる、というのは自分の見立てだと断りを入れます。

土との違いは競合: 土では隣り合う株が養分を奪い合い、ケールがカリウムを多く取れば隣のレタスに回らず欠乏が出る、と動画は言います。土は場所ごとに測り直す必要があるのに対し、水なら一か所の硝酸を測れば、どの株も同じだけ受け取っていると分かる。この競合の少なさを、力を出しきらせやすい理由に挙げます。

速さでは言わない: 動画は、速くも遅くもならず、味が良くなるのでもなく、変わるのは持っている力を出しきれるかどうかだけだと結びます。日数を並べて測った比較を出しているわけではないので、これは測定ではなく道理の側からの答えです。それでも、速さを測った資料が見当たらないというこの項目の立ち位置とは同じ向きを指しています。