魚がいると殺虫剤は使えない?
手間と経済の説
判定: 条件によって変わる
薬の種類と撒き方によって、魚への届き方が変わります。植物由来・微生物由来の3種を葉に撒いた試験が1本あるだけで、広く効く合成殺虫剤は測られていません。
言われていること
「魚がいるから薬は一切使えない」「虫が出たら手で取るしかない」という言い方が、入門の案内でくり返されます。水がひとつながりなので、葉にかけたものはいずれナイルティラピアの泳ぐ水に落ちてくる、という理屈です。選べる薬が無いの一言で、防除の手立てをまとめてあきらめる説明も見かけます。
誰が、何を、どう測ったか
Rašković ら 2022(Frontiers in Marine Science)が、バジルに市販の殺虫剤3種(除虫菊(ピレトリン)・アザジラクチン・スピノサド)を葉面散布し、1・3・6・12・24・36・48・72・96時間後の水を分析しました。魚のいる系に直接かけることは倫理審査で認められないため、散布・生物ろ過・魚への暴露を別々に組んだ3試験です。
測るとどうか
除虫菊は定量下限の50ng/Lを全時点で下回りました。スピノサドの最大値はメディアベッドで13ng/L、いかだ式で230ng/L、アザジラクチンは1.3〜1.4μg/Lで、いずれも撒いた有効成分の0.01%未満です。1.5〜15μg/Lを入れた生物ろ材では、アンモニアと亜硝酸態窒素(NO₂-N)と硝酸に有意差が出ませんでした。
どう言えば正しいか
薬の有無ではなく、何を、どこに、どうかけたかで分かれます。この3種は水にほとんど落ちず、ナイルティラピアの体重と体長も7日間の暴露では変わりませんでした。ただしアザジラクチンでは白血球の減少と肝臓の脂質過酸化が出ており、著者は結合型では慎重にと書いています。広く効く合成殺虫剤を同じように測った資料は見当たりません。