土耕の10倍の収量が出る?
収量と成長の説
判定: 条件によって変わる
10倍という数字は、何と比べたかで決まります。FAOの資料そのものは10倍と書いておらず、施設と露地を1作あたりで並べた集計では2倍ほどにとどまります。
言われていること
「アクアポニックスなら同じ面積で土耕の10倍とれる」という一文が、紹介記事や設備の案内でくり返し使われます。比べた相手が露地なのか施設なのか、面積あたりか年あたりかも書かれないまま、数字だけが先に歩き出します。「水耕の2〜5倍」「土の3倍」といった出どころの違う値が同じ紙面に並ぶこともあり、どれも測定条件を持ちません。
誰が、何を、どう測ったか
出どころをたどると、FAO技術報告589にこの記述はありません。同書が書いているのは、最も集約的な水耕が最も集約的な土耕を20〜25%上回るというところまでで、2〜5倍という値は水耕の専門家が丸めたものだと断っています。単位面積あたりで集めたのが Gargaro ら 2023 のレタスの集計で、論文121本・979観測を対象にしています。
測るとどうか
Gargaro ら 2023 では、施設型の平均が3.68 kg/m²、比較に置いたFAOの露地統計が1.88 kg/m²でした。1作・単位面積なら約2倍で、積み上げ式(垂直タワー)だけを取り出しても6.88 kg/m²です。一方 Curci ら 2026 の45日・1区9株のチコリー試験では、1株の生鮮重は温室の土で89.9 g、分離型では18.6 gにとどまりました。
どう言えば正しいか
何と、どの単位で比べた数字なのかを先に確かめるのが、この説の正しい読み方です。1作・単位面積で並べれば2倍前後が集計の姿で、10倍に近づくのは年に何作回せるかを掛けたときです。養分の管理が追いつかなければ土耕を下回る測定もあり、上にも下にも開いています。水耕栽培より育ちがよい?も野菜が2倍の速さで育つ?も、同じ形の問いです。