根と酸素図鑑
根をつつむ水の膜(根のまわりで起きること)
霧が根に着くと、薄い水の膜が残ります。養分も酸素も、この膜を渡ってから根に入るので、膜の厚さがそのまま両方の通りやすさを決めます。霧の粒は根の表面に当たると、そこで広がって隣の粒とつながり、一枚の薄い水の膜になります。膜は重力で下へ流れ、まわりの空気へ蒸発し、次の噴霧でまた足されます。…
根の呼吸(根のまわりで起きること)
根は酸素を吸って二酸化炭素を出します。葉と違って自分で酸素を作れないので、外から届く量がそのまま上限になります。根の細胞は糖を分解してATPという形の力を作り、そのときに酸素を使って二酸化炭素を出します。作られた力は、伸びていく先端の成長と、濃さの坂を登って養分を取り込む養分が根に入るまでの仕事に回ります。…
養分が根に入るまで(根のまわりで起きること)
養分は水に溶けた形でしか根に入れません。霧が置いていった水の膜を渡り、根の表面の輸送体に受け取られて、はじめて株のものになります。養液に溶けたイオンは、まず根をつつむ水の膜の中を拡散で動いて、根の表面にたどり着きます。そこから先は細胞膜の輸送体が受け取る仕事で、薄いほうから濃いほうへ引き上げる分には力を使います。…
蒸散が根の水を引く(根のまわりで起きること)
根が水を吸う力の多くは、葉の蒸散が作ります。空気が湿ったままだと引く力が弱まり、水に乗って運ばれる成分ほど先に届かなくなります。葉の気孔から水が出ていくと、その分だけ管の中の水が引かれ、根から地上部へ向かう一方通行の流れができます。水と一緒に、水に溶けた成分も運ばれます。…
根が新しく出るところ(根のまわりで起きること)
新しい根は、茎や既存の根の決まった組織から出てきます。噴霧の装置は挿し木の発根がそろいやすい場面として、比較的よく測られています。側根は根の内側にある内鞘から起こり、外側の組織を押し破って出てきます。挿し木の切り口から出る不定根は、茎の管のまわりの細胞が分かれ直して作られます。どちらも出はじめは細く…
根の先と根元(根のまわりで起きること)
水と養分をよく吸うのは、根の先に近いところです。根元側は表面が固まっていき、吸う場所というより通り道としての役割が大きくなります。根の先には、細胞が増える場所と伸びる場所が並び、そのすぐ後ろに根毛が立ちます。取り込みの多くはこの帯で起きます。根元へ戻るほど、内皮にカスパリー線、その外側にスベリン板ができ…
根の温度(根のまわりで起きること)
根の温度は、地上部の温度とは別に動きます。噴霧では根を守る液だめが無いぶん、霧の温度と部屋の空気にそのまま引っぱられます。根の温度は、三つのことを同時に動かします。呼吸の速さ、水の膜が蒸発する速さ、そして水に溶けられる酸素の量です。上がれば呼吸は速くなり、膜は早く消え、溶ける酸素は減ります。下がれば逆に…
根の浸出液と微生物(根のまわりで起きること)
根は糖や有機酸を表面から外へ出しています。噴霧では根が空気中にあるため、株を壊さずにその浸出液を集められます。根は取り込むだけでなく、糖・有機酸・アミノ酸などを表面から外へ出しています。出たものは根をつつむ水の膜に溶け、そこへ集まる細菌や糸状菌の餌になります。微生物は根の表面でぬるりとした膜を作って住みつき…
空気の中と水の中の酸素(酸素の届きかた)
酸素は水の中をほとんど進めません。20℃の拡散係数は空気で0.201 cm² s⁻¹、水では2.1×10⁻⁵ cm² s⁻¹と、およそ1万倍の差があります。根の表面では、酸素が二つの道を続けて通ります。空気の中を進むあいだは速く、根をつつむ水の膜に入ったところから極端に遅くなります。…
根のまわりの動かない層(酸素の届きかた)
根の表面には、流れが届かない薄い層がついています。ここだけは撹拌の助けが無く、酸素も養分も拡散だけで渡ることになります。根の表面のすぐ外側には、流れが入り込めない層が残ります。境膜(未撹拌層)と呼ばれ、ここだけは風や噴霧の勢いが助けにならず、酸素も養分も拡散だけで渡ります。根をつつむ水の膜と重なり…
厚くなった水の膜(酸素の届きかた)
水の膜が厚くなると、酸素は根まで届きません。濡れすぎた根は、空気の中にあっても水に沈めたのとほとんど変わらない状態になります。根に載った水が抜けきらず、膜が厚みを増した状態です。酸素は水の中をほとんど進めないので、厚いほど表面に届く量が減ります。空気中に吊るしてあっても…
霧が止まっているあいだ(酸素の届きかた)
根が空気に触れるのは、霧が止まっているあいだです。休みが酸素の時間になりますが、長すぎれば水の膜ごと乾きます。噴霧が止まった瞬間から、表面の水が減りはじめます。膜が薄くなるほど酸素の通り道が短くなり、根が空気から直に受け取れる時間になります。同じ時間に蒸散が根の水を引く動きも進むので、休みが延びれば膜は消え…
根の内側に届く酸素(酸素の届きかた)
根は、内側ほど酸素が薄くなります。切り開いた根の切片では酸素の消費が2〜6倍に見え、無傷の根では外からの拡散が追いついていないことが分かります。酸素は表面から拡散で入るので、中心へ行くほど薄くなります。太い根の中心と、根が絡んで束になった塊の内側は、どちらも「拡散する距離が伸びる」という同じ話です。…
溶けた酸素と、空気の酸素(酸素の届きかた)
水耕は水に溶けた酸素を、噴霧は空気の酸素を使います。同じ「酸素」という言葉でも、量も届き方も別のものとして読む必要があります。同じ酸素でも、根が受け取る形が違います。水耕では水に溶けているぶんだけが根に回り、噴霧では空気中の酸素が根をつつむ水の膜を越えて入ります。空気側は量に余裕がある代わりに…
白い根(根の見た目)
新しく伸びた根は白く見えます。白さは若さの印であって、健康そのものを測った値ではありません。先端から伸びたばかりの区間は、細胞が若く、表面に色のもとになるものがまだ乗っていません。厚い皮も沈着もないので、内側の白さがそのまま透けて見えます。噴霧では根が空気の中にむき出しなので…
根の褐変(根の見た目)
根が茶色くなる理由は、一つではありません。老化・表面の変化・鉄などの沈着・酸素不足・病害が同じような色に見えるので、色だけでは決められません。茶色はひとつの現象ではなく、別々の原因が同じ色に見えている状態です。根元側から進む生理的な変色、表面に沈着したもの、酸素の薄い場所で組織が傷んだもの…
根毛の量(根の見た目)
根毛は、根が水と養分に触れる面積を大きくする細い毛です。根に光が当たると密度が下がったという実測があり、部屋の遮光は根の見た目に効きます。根毛は表皮の細胞が外へ伸びた細い毛で、根が水と養分に触れる面積を広げます。噴霧では根が空気の中にあるため、湿った空気へ伸びた根毛が霧の粒を受け止める面になります。…
根の伸び方(根の見た目)
根の伸び方と枝分かれは、養液の条件で大きく変わります。噴霧では根がむき出しなので、その変化を掘り返さずに見比べられます。伸び方は、先端がどこまで進むかと、途中から何本が分かれるかの二つでできています。噴霧では根が空気の中に垂れているので、同じ株を日を置いて同じ角度で撮り、重ねて比べられます。…
根の太さ(根の見た目)
根の太さは、外から中心まで酸素が進む距離を決めます。太い根ほど中心が遠く、同じ環境でも内側は酸素が薄くなります。太さは見た目の印象ではなく、表面から中心までの距離です。酸素は表面から入って組織の中を進むので、太い根ほど中心までの道のりが長くなります。細胞の水を通る拡散は気体の中を進むのに比べてけた違いに遅いため…
光が当たった根(根の見た目)
根に光が当たると、根の見た目が変わります。緑や藻の色がつくほか、根毛の密度が下がったという実測もあります。チャンバーは暗いはずの箱ですが、点検口のすきま、配管の通し穴、透明な部材から明かりが入ります。光が届いた根では別々の二つが起きます。ひとつは光と水と養分がそろって藻が着くこと…