蒸散が根の水を引く

根のまわりで起きること

根が水を吸う力の多くは、葉の蒸散が作ります。空気が湿ったままだと引く力が弱まり、水に乗って運ばれる成分ほど先に届かなくなります。

何が起きているか

葉の気孔から水が出ていくと、その分だけ管の中の水が引かれ、根から地上部へ向かう一方通行の流れができます。水と一緒に、水に溶けた成分も運ばれます。カルシウムやホウ素のように葉から葉へ移し替えのきかない成分は、この流れに乗る以外の届き方をほとんど持っていません。根が押し上げる力もありますが、昼の主役は葉の側です。

何が効いているか

引く力の大きさは、葉のまわりの空気がどれだけ乾いているかと葉に当たる風で決まります。噴霧の部屋は湿度が高くなりやすく、霧を出すほど蒸散は弱まる向きに働きます。株のまわりの風速の帯と温湿度データロガーを合わせて、湿度と風のどちらが効いているかを分けて見ます。霧の量だけを増やしても、この向きは変えられません。

目で見て分かること

流れが弱いと、まず葉先が茶色く枯れるが内側の若い葉から出ます。昼だけしおれて夕方に戻るなら、引く力に対して膜からの供給が追いついていません。根の側は白いままのことも多く、根を見ても分かりません。葉の縁と、いちばん新しい葉を先に見ます。しおれが夕方に戻るかどうかも、その場で確かめられます。

どこまで確かめられているか

葉先枯れと蒸散の関係は、Moosavi-Nezhad と Meng 2025 が水耕レタス「Rex」で毎秒1.0 mの縦方向送風・1日12時間・28日を試し、送風だけで葉先枯れがほぼ出なくなったと報告しています。Ries ら 2026 では溶存酸素2.9対3.5〜4.0 mg/L・18株×3ブロックで、組織の含水率が5〜7%高く出ました。どちらも噴霧栽培ではありません。

解説動画: 【中1 理科 生物】 植物と水(蒸散の実験) (14分)/映像授業 Try IT(トライイット)

吸った水の行方: 動画は、根から吸い上げた水の使い道を二つに分けます。ひとつはデンプンを作る材料で、そちらに回る量はごくわずかだと言います。残りの大半は葉から水蒸気になって外へ出ていきます。この、葉から水を蒸気にして捨てるはたらきを蒸散と呼ぶ、というところから話が始まります。どこで起きているのかを先に押さえてから、実験に進む組み立てです。

捨てるから吸える: せっかく吸った水をなぜ捨てるのか。動画の答えは新しい水を吸うためです。体の中が水で満たされたままだと次の水が入る場所がないので、外へ出しているほど根からの吸い上げが続きます。水を吸うときは養分も一緒に吸っているとも述べるので、養分が根に入るまでもこの流れの上に乗っていることになります。

出口は葉の裏: 葉の裏を顕微鏡で拡大すると、口のような形で間に隙間が開いたものが並んでいます。これが気孔で、水を蒸気にして捨てるときのほかに、植物のいろいろな空気の出し入れにも使われると動画は述べます。表側や茎にも少しはありますが裏側にとくに多いので、蒸散もそこが中心になる、とまとめます。

ふさいで確かめる: 実験はこう組みます。同じ植物の枝を四本用意し、油を塗って葉の表をふさいだもの、裏をふさいだもの、葉を取ったもの、何もしないものを、水を入れたメスシリンダーに挿します。さらに水面へ油を垂らして、水そのものが蒸発する分を止めます。光の当たる場所にしばらく置いて、減った量を比べる手順です。

減った水は蒸散の量: 減り方は、何もしないもの、表をふさいだもの、裏をふさいだもの、葉を取ったものの順でした。表をふさいでも落ち込みは小さく、裏をふさぐと大きい。気孔が裏に多いからです。減った量はそのまま葉から出ていった量なので、根がどれだけ吸うかは葉の側の出口が決めていると読める実験になっています。