空気の中と水の中の酸素

酸素の届きかた

酸素は水の中をほとんど進めません。20℃の拡散係数は空気で0.201 cm² s⁻¹、水では2.1×10⁻⁵ cm² s⁻¹と、およそ1万倍の差があります。

何が起きているか

根の表面では、酸素が二つの道を続けて通ります。空気の中を進むあいだは速く、根をつつむ水の膜に入ったところから極端に遅くなります。20℃の拡散係数は空気で0.201 cm² s⁻¹、水で2.1×10⁻⁵ cm² s⁻¹。同じ気体が、相手が変わるだけで1万分の1の速さになります。根を空気中に置く栽培は、この遅い区間を短く保つための形です。

何が効いているか

効いているのは、水の区間がどれだけ長いかです。拡散に要る時間は距離の二乗で伸びるので、膜が二倍の厚さになれば四倍待つことになります。さらに水に溶けられる酸素の量そのものが少ないぶんの抵抗が重なり、Jiménez ら 2024 はこの溶解度の低さでおよそ30倍の抵抗が上乗せされると書いています。距離を決めるのは粒径と気流の側です。

目で見て分かること

目で見えるのは酸素ではなく、水の見えかたです。根が白くつやのある状態で、噴霧の合間に表面の光りが引いていくなら、水の区間は短く保たれています。逆にいつ見ても濡れて光り、しずくが伝っているなら長いままです。行き着く先が根が茶色く変わるで、根が底の水に浸かっているまで進むと、空気中に置いた意味が消えます。

どこまで確かめられているか

0.201 cm² s⁻¹と2.1×10⁻⁵ cm² s⁻¹、および溶解度による約30倍の上乗せは、Jiménez ら 2024(Plant Physiology)が無傷の根の酸素拡散を測る方法を論じた中で挙げた値です。噴霧栽培の根を測った値ではありません。膜が何µmまでなら間に合うのかを噴霧の系で測った資料は見当たりません。