続け方図鑑
三日坊主の正体(続かない理由)
三日坊主の正体は、意志が弱いことではなく、面白さに届く前に準備の面倒さのほうが先に来てしまう順番の問題です。ギターなら最初の一週間は指が痛いだけで曲になりませんし、ランニングなら走る前に着替えと靴ひもがあります。楽しさが出てくるまでの数週間を、準備の面倒さが上回っているだけなのです。そこを超えると…
完璧主義でつぶれる(続かない理由)
完璧主義でつぶれるのは、下手な状態の自分を見ていられず、練習そのものの回数が減ってしまうことです。イラストなら一枚目の線が気に入らなくて描き始められず、料理なら材料がレシピどおりにそろわない日は作らなくなります。うまくなるために要るのは下手なままの回数なのに、その回数を自分の手で削ってしまうのが厄介なところです。…
道具沼にはまる(続かない理由)
道具沼にはまるのは、道具を調べている時間が楽しくて、それだけで上達している気分になってしまうことです。コーヒーならミルとドリッパーを買い替え続け、写真ならレンズが増えていきますが、困るのは出費だけではありません。道具が増えるほど準備と片づけが重くなり、出すのに気力が要る趣味に変わって、かえって回数が減ります。…
上達しない時期(続かない理由)
上達しない時期は、最初の数か月はぐんぐん伸びたあとに必ず来る、練習しているのに何も変わらない停滞の時間です。語学なら聞き取れる語が増えないまま数か月が過ぎ、ボルダリングなら同じ課題を何度も落とせません。実際には体や耳の内側で作り直しが進んでいる途中で、外に見える結果が遅れているだけのことが多いのです。伸びは階段状で…
人と比べて嫌になる(続かない理由)
人と比べて嫌になるのは、始めて三か月の自分と、十年やっている人の投稿が同じ画面に並んでしまうことです。写真でもギターでも、流れてくるのは相手が何百回のうちから選んだ一枚や一本で、その手前にある失敗は映りません。それを自分の平均と比べてしまうので、差は実際より大きく見え、腕より先に続ける気力のほうが削られていきます。…
ハードルを下げる(仕組みにする)
ハードルを下げるのは、やる気の有無ではなく、始めるまでの手数の多さを削ることです。押し入れから道具を出す、着替える、机を空ける、この三手が入るだけで、疲れた日には届かなくなります。ジムまで往復一時間かかる人が続かないのは意志の問題ではなく、開始までの摩擦が大きいだけ、ということがよくあります。選ぶ回数が減るほど…
曜日と時間を固定する(仕組みにする)
曜日と時間を固定するのは、空いた時間にやろうとすると最後に回されてしまう趣味を、先に予定表へ組み込んでおくことです。曜日と時刻をあらかじめ決めてしまえば、そこだけは毎回の判断が要らなくなり、火曜と木曜の朝に置いた人は雨の日以外なら考えずに靴を履けるようになります。選ぶ回数が減るほど、趣味は続きやすくなります。…
道具を出しっぱなしにする(仕組みにする)
道具を出しっぱなしにするのは、片づけることで増えてしまう「次に使うときの手数」を、あらかじめ消しておくことです。ギターはスタンドに立てておくと通りすがりに手が伸びますし、水彩画は道具を出したままなら思いついた五分で描けます。逆にしまい込んだ道具は、一年触らないままになりがちです。見える場所にこそ…
記録をつける(仕組みにする)
記録をつけるのは、自分がやってきた量を目で見られる形にして、その日の気分に左右されにくくすることです。ランニングなら距離とコース、パン作りなら粉と水の量と焼き上がりの写真を残していくと、三か月ぶんたまったころにうまくいく条件と崩れる条件が見えてきます。良かった日を再現できるようになるのが、記録の値打ちです。…
小さく公開する(仕組みにする)
小さく公開するのは、誰にも見せない趣味だと止めても誰も困らないので、月に一度だけでも見せる場を自分から作ることです。効いているのは反応そのものより、締切と他人の目で自分の物を見直す時間で、作りかけを見せるだけでも自分の目が急に厳しくなります。家族に見せる、同僚に一枚送るくらいの小さな規模で十分続きます。…
目標の立て方(伸ばす)
目標の立て方は、「うまくなる」のように判定できない目標をやめて、日付と数量が入る形に置き換えることです。ギターなら半年後に一曲を通して弾く、登山なら春に標高千メートル前後の山へ日帰りで登る、という具合です。達成できたかどうかがそこではじめて分かるようになり、達成のたびに続ける根拠が一つ増えます。…
うまい人を真似る(伸ばす)
うまい人を真似るのは、上手な人を見て「すごい」で終わらせず、出来上がりではなく途中の手順と判断を持ち帰ることです。料理なら火加減を変える瞬間、ボルダリングなら足を置き直した位置というふうに、動画なら0.5倍速と一時停止で自分の動きとの違いを一点だけ探します。真似は練習の設計図を借りることで…
基礎に戻る(伸ばす)
基礎に戻るのは、ある段階から急に難しく感じる原因が新しい技術ではなく、最初に雑に覚えた型そのものにあると気づくことです。ギターで速いフレーズが弾けないのは指の力ではなく構えの角度、ランニングで膝が痛むのは距離ではなく着地の位置という具合で、土台が傾いたまま積むほど、上のほうで直しにくくなります。鏡や動画を使うと…
発表・大会に出る(伸ばす)
発表・大会に出るのは、人前に出す日を決めることで、できることの繰り返しをやめ、できない部分から手を付けるように練習の中身を変えることです。ピアノの発表会でも、ランニングの市民大会でも、当日の緊張と終わったあとのやり切った感覚は、独りの練習では手に入りません。出る前と後で、同じ趣味の見え方が変わります。…
休んでいい期間(休む・戻る)
休んでいい期間は、仕事の繁忙期や家族の事情、体調で趣味が止まるときに、止まった自分を失格と見なさず戻る道を残しておく考え方です。登山のように季節や天候に左右されるものは、そもそも動けない月がある前提で組まれています。一年のうち数か月やらないのは、普通の続け方のうちに入ります。休むことと、やめることは別物です。…
再開のしかた(休む・戻る)
再開のしかたは、長く離れたあと、離れる前の自分へ一気に戻ろうとせず、いちばん軽い一回から始めることです。ランニングなら以前の距離を走って痛め、楽器なら弾けなくなった曲を出して落ち込む、という失敗がよく起きます。止めた期間のぶんだけ下から積み直す時間は要りますが、戻りは初回よりずっと速いのが救いです。長く離れたあと…