息を止める音と、こすって出す音の出し方。
破裂音と摩擦音の8項目は、日本語にある音から順に進めると、新しく覚える口の形を1段に1つずつ足していけます。順番は、/p/と/b/と/h/、次に/s/と/z/・/ʃ/と/ʒ/・/tʃ/と/dʒ/、その次に/f/と/v/、最後に/θ/と/ð/です。後ろの2段は、歯を下唇や舌に当てるという、日本語の子音に無い動きから作る音です。
最初の段で直すのは、口の形よりも息の強さです。pig と big、pack と back を、口の前に手のひらをかざして言い比べ、p で息がはっきり当たるかを確かめます。日本語話者11人の語頭の p・t・k は、声が出始めるまでの息の長さが42か月をはさんだ2回の測定でほとんど変わらず、その長さはなまりの強さの評価とも結びついていました(Riney と Takagi 1999)。英語に触れる時間が増えても自然には直りにくい所なので、語頭の p には最初の段から息を足します。/h/は次の母音の口の形を先に作ってから息を出すだけの音で、同じ段で済ませます。
2段目は、舌を歯ぐきの近くに寄せて出す音のなかまです。練習する対は、声の有無だけが違う sip / zip、舌の位置と唇の丸めが違う sip / ship、止めてから抜くかどうかが違う ship / chip の3種類に分けます。1回の練習で種類を混ぜると、口のどこを変えたのかが自分でも分からなくなるので、1つの対を言い切ってから次の対へ移ります。/ʃ/と/ʒ/の /ʒ/ は日本語に無い音で、measure の真ん中を「ジュ」と詰まらせずに伸ばし続けられれば、摩擦だけで出せています。つづりではshとchがこの段に当たります。
3段目と4段目は、聞き分けにも時間がかかります。日本語話者104人に声の無い摩擦音5つを聞き分けさせた実験では、正答は /ʃ/ の88%から /θ/ の55%まで開きました(Lambacher ら 2001)。聞き違いは、/θ/ を /f/ と、/v/ を /b/ や /ð/ と、/ð/ を /z/ と取る形に集まります(Iino と Wistner 2024 がまとめた先行研究)。練習の対も取り違えの形に合わせ、fin / thin、vest / best、van / than、breeze / breathe、think / sink を組みます。/θ/を最後の段に置くのは、8項目の中で聞き分けがいちばん遅れる音だからで、他の段より多く時間を割きます。
1段を終える目安は、声の無い音(p・s・f・θ)で手のひらに息が当たり続け、伸ばせる声のある音(z・v・ð)でのどに当てた指が震えることです。そのうえで対の2語を録って聞き返し、2つが別の語に聞こえれば次の段へ進みます。歯と舌の当て方そのものの練習手順は「th・f・vを出す」の節にあります。
出典
- 論文・英語 Riney TJ, Takagi N(1999) Global Foreign Accent and Voice Onset Time Among Japanese EFL Speakers
- 論文・英語 Lambacher SG, Martens WL, Nelson B, Berman J(2001) Identification of English voiceless fricatives by Japanese listeners: The influence of vowel context on sensitivity and response bias
- 論文・英語 Iino A, Wistner B(法政大学多摩論集)(2024) Effects of computer-assisted HVPT, explicit articulatory instruction, and shadowing on Japanese EFL learners' perception and production of English fricatives