炊飯には軟水でなければいけない?

炊く

硬度の高い水のほうが総合評価は高い、という報告もあります。食品化学の報告で、極端な硬水を除けば、軟水でなければいけないと断定できる差ではありません。

言われていること

炊飯には軟水を使うべきで、硬水はパサつくので避けたほうがよいと、料理の情報サイトや水を扱う事業者が案内しています。理由として挙げられるのは、硬水に多いカルシウムが米の細胞壁のペクチンと結びついて吸水を妨げるという機構で、水の硬度が高い水ではパサパサになった状態や芯が残った状態になると書かれることもあります。

測るとどうか

中村武夫 ら 1997 の報告では、食味官能試験のにおい・味・総合など多くの項目で、比較的硬度の高い水で炊いた米飯のほうが有意に高い評価を得ています。かたさと色つやには有意差が認められていません。硬度1310mg/Lという極端な硬水では黄色く膨らまず酸っぱい香りになったという報告もあり、黄色くなった状態が出るのはこの水準です。

誰が・何を・どう測ったか

日本食品化学学会誌に載った中村武夫 ら 1997「硬度の異なる調理用水による炊飯米の食味評価に関する研究」が、硬度の違う水で炊いた米飯を同じ手順で比べたものです。著者らはカルシウムとマグネシウムの補充による食味向上の可能性に触れています。極端な硬水の話はこれとは別の報告で、水の硬度が1000mg/Lを大きく超える水を使った例です。評価人数や品種までは確認できていません。

だからどうする

日本の水道水は多くが軟水の範囲に収まるので、硬度を理由に水を買い替える必要は薄いと言えます。気にするなら、水の硬度の表示が1000mg/Lを大きく超える輸入のミネラルウォーターを炊飯に使わない、という一点で足ります。アルカリイオン水で炊くとおいしいと同じで、水そのものより水をはかる精度のほうを先に見直します。

まだ分かっていないこと

硬度がどこから食味に効きはじめ、どこから悪くなるのかという境目は分かっていません。品種や水は米の重さの何倍か(加水量の重量比)、糊化(α化)の進み方との組み合わせを変えて硬度を振った試験は見当たりません。カルシウムとマグネシウムの比率を変えた比較も、家庭の水道水どうしを同じ条件で比べた公開データも確認できていません。

解説動画: 軟水 硬水ってちがいあんの?【くらべてみた】/すいじば SUIJIBA

硬度で分かれる: 動画はまず、水の硬度がカルシウムとマグネシウムの量で決まることを確かめます。WHOの基準では1Lあたり120mgまでが軟水で、それ以上が硬水。日本の水道水は計測点の95%が軟水で、山から海までの距離が短く、雨水が地層を通る時間が大陸より短いことを理由に挙げます。

条件をそろえる: 炊く前に、軟水は水をよく吸って糊化(α化)が均一に進み、硬水はカルシウムが米の表層をわずかに締めて硬めに仕上がるとされている、と一般論を置きます。そのうえで米150g・水200gを量り、研ぐ水まで同じ水にそろえて炊きます。硬度1468の水と、その4分の1ほどの硬水、日本の軟水の3つです。

煮物では消える: 同じ水で煮物も作って先に当てにいきますが、出汁と調味料が入るとまったく見分けがつきません。動画は、硬水は加熱するとカルシウムの一部が結晶になって沈むので、飲んだときの苦みや舌のざらつきは料理では薄まると説明します。炊き上がった米のほうも、色つやと表面の質感には差が見えないと述べます。

目隠しで食べる: 並べ替えて目隠しで食べると、粒感が立って少し硬いものと明らかに柔らかいものが分かれ、残る一皿はその中間だと話します。ただし苦みは出ず、言葉にできるほどの差ではないと繰り返します。3周4周と食べ続けてやっと何かが違うと感じる程度で、おかずと一緒なら気づかない、という言い方です。

40倍でこの差: 結びは、硬度が40倍以上ちがう水で比べてもほとんど違いはない、だから気にしなくてよい、というものです。集中して食べ続ければわずかに分かるという但し書きは残りますが、軟水でなければという結論には進みません。水を選ぶ話の置き場所は、アルカリイオン水で炊くとおいしいと同じところになります。