土鍋で炊くとおいしい?

炊く

器具だけを替えて食味を比べた公開データは見当たりません。同じ米・同じ加水で並べた比較はなく、説明できるのは加熱の進み方が炊飯器と違うところまでです。

言われていること

土鍋で炊いたごはんは炊飯器より甘みと香りが立つと、土鍋の作り手や料理の記事が説明しています。根拠として挙げられるのは、厚い土の壁がゆっくり温度を上げるので吸水と糖の生成が進む、という筋道です。火加減を自分で決められる点も理由に挙がり、鍋で炊くやり方や蒸し煮にする手順の紹介と一緒に語られます。おこげを持ち味として書く記事もあります。

測るとどうか

同じ米・同じ加水量で器具だけを替え、食味官能試験で比べた公開データは見当たりません。説明できるのは加熱の進み方の違いまでで、炊飯の過程は温度上昇期およそ10分、沸騰期およそ5分、蒸し煮期10〜15分、蒸らし期およそ10分と農林水産省が示しています。蒸らすを自分で確保するかどうかが実務の差で、この段階の長さは器具によらず示された値です。

誰が・何を・どう測ったか

農林水産省「米の調理特性」の加熱過程と、檜作進 1970(調理科学)の記述が土台です。どちらも温度と時間の話であって、器具どうしの比較ではありません。土鍋と炊飯器を同条件で比べた食味官能試験を探しましたが、公的機関の資料にも学会誌にも見当たらず、炊き上がり倍率やテンシプレッサーの値をそろえた例も確認できていません。

だからどうする

器具を替える前に、鍋で炊くなら火を止めたあと10〜15分の蒸らす時間を自分で確保します。ここが炊飯器との実務上の違いで、省くと炊きムラが出た状態やべちゃついた状態に寄ります。ほぐすのは蒸らしのあと、というところまで決めておきます。器具の違いを語る前にこの手順をそろえるほうが、毎回の結果が揃いやすく、比べる土台にもなります。

まだ分かっていないこと

器具の違いが食味に出るのか、出るとすればどの物性の差なのかは測られていません。土鍋の厚みや火加減をそろえた試験も、テンシプレッサーで硬さを比べた公開例も確認できていません。糊化(α化)の進み方や沸騰までの時間まで含めて器具を比べた報告も、同じ米で炊き分けた記録も見当たりません。土鍋の種類による違いも同じく分かっていません。

解説動画: ストウブ(STAUB)鍋と土鍋で同時に炊飯 炊きあがったご飯がどちらが美味しいのか食べ比べてみました/プロが教える美味しい料理 - ロサンゼルス・テーブル

2つの鍋を同時に: 動画は、8号の土鍋と24cmの鋳物のココット鍋に、同じ米を3合ずつ入れて、同じ時刻に火にかけます。水は1合あたり200mL、3合で600mLと量ってそろえます。同じ米・同じ加水・同じ火の入れはじめにしたうえで、変えるのは器だけにする、という並べ方から始まっていきます。

浸すのは器の外で: 洗うほうは、たっぷりの水で3回ほど繰り返してざるに上げ、水気を切ります。ここで動画が注意を入れるのが土鍋のほうで、水を張ったまま置くと器が水を吸い、そのまま火にかけるとひびや割れにつながると言います。だから浸すのはボウルの側で行い、そのあいだ置いておく時間は20〜30分です。

沸くまでと沸いてから: どちらの鍋も中火にかけ、沸くまでは蓋を取って中を見てもかまわない、と言います。沸いたら蓋をして弱火に落とし、そこから10分。ここから先は炊いている間は蓋を開けてはいけないの言うとおり、我慢して開けません。火を止めたあとに置く10分の蒸らしまで、2つの鍋でまったく同じ時間を使います。

開けたときの様子: 蓋を開けると、どちらもつやが出て粒が立っている状態で、甘い香りが部屋に広がったと話します。焦げついているところも無かったと確かめてから、ほぐすのもどちらも同じように、切るように混ぜて済ませます。ここまでの見た目と手順の上では、2つの鍋のあいだに差らしい差は付いていません。

最後は好みに戻る: 食べ比べでは、土鍋のほうはもっちりして甘みを感じる、鋳物鍋のほうは若干さっぱりしている、と話し、最後は好みだと思うと結んで終わります。器だけを変えて味を測った記録ではなく、同じ日に同じ条件で並べた一度の食べ比べとして読むと、この項目がどこで止まっているのかが見えてきます。