炊いている間は蓋を開けてはいけない?

炊く

開けて何が変わるかは、加熱のどの段階かで違います。炊飯は温度上昇・沸騰・蒸し煮と段階を追って進む加熱で、段階ごとに起きていることが変わるためです。

言われていること

「赤子泣いてもふた取るな」の言い伝えのとおり、炊いている間は蓋を開けてはいけない、と料理本や鍋の説明が書いています。蒸気と温度が逃げるから、というのが理由として添えられる説明で、鍋で炊く手順にも沸騰させるまでの注意として書かれています。炊飯器の取扱説明書にも、炊飯中に蓋を開けないよう書かれています。

測るとどうか

炊飯の加熱は温度上昇期およそ10分から始まり、沸騰期およそ5分、蒸し煮期10〜15分と進みます。沸騰後は水が飯粒の中へ移る段階です。完全な糊化(α化)には98℃以上で約20分が必要とされているので、途中で温度が落ちる操作はこの時間を削ることになります。蓋を開けた時間と食味の関係を食味官能試験で測った公開データは見当たりません。

誰が・何を・どう測ったか

農林水産省「米の調理特性」と檜作進 1970(調理科学)が、加熱過程と糊化(α化)の条件の出どころです。檜作進は65℃では糊化に十数時間を要するが98℃なら20〜30分で足りるとしています。蓋の開閉を条件にした試験は探した範囲では見つからず、炊き上がり倍率で比べた例も、食味官能試験で確かめた資料もありません。

だからどうする

沸騰させるまでと蒸し煮にするあいだは開けず、水加減を見たいなら沸騰の直後に一度だけにとどめます。蒸らすに入ってからは、炊飯器なら合図と同時に開けてほぐす。鍋なら、その一度で火加減も直せます。段階ごとに開けてよいかが違う、と覚えるほうが実際の手順に合い、残った水が見えるかどうかが目安になります。

まだ分かっていないこと

何秒開けると内部の温度が何度下がり、糊化(α化)がどれだけ遅れるのかは測られていません。鍋の材質や火力を変えて開閉の影響を比べた公開データも見当たらず、芯が残った状態や炊きムラが出た状態との対応も確認できていません。炊飯器で蓋を開けたときに制御がどう戻るのかも公表されておらず、開けている時間の許容範囲も示されていません。