おとめ座

春の星座

見え方: 空が暗ければ肉眼で

おとめ座は全天で二番目に広い星座ですが、含まれる1等星は青白いスピカ一つだけです。

形のたどりかた

スピカを見つけてから、北へ向かって組み立てます。スピカのすぐ北西に約2.7等のポリマがあり、ここがY字の分かれ目です。分かれ目から左右へ伸びる二本が乙女の両腕、下へ垂れる一本が体にあたります。Yの字を大きく寝かせた形として結ぶと崩れません。ただし東西の広がりは40度以上あり、腕の先まで含めると双眼鏡の視野では一度にたどれない大きさになります。腕の側は西から東へ、体の側はスピカへ向かって南へ下ります。

目じるしになる星

スピカは1.0等の青白い星です。表面温度は2万ケルビンを超え、色の違いが肉眼でも分かる数少ない星で、この白さから和名を「真珠星」といいます。分かれ目のポリマは2.7等、東の腕の先のビンデミアトリクスは2.8等で、この二つが見えるかどうかで星座として結べるかが決まります。残りの星はおおむね3等より暗く、名の知られたものもほとんどありません。乙女の姿として結ぶには、この三つを足がかりにするほかありません。

見ごろの時期と南中高度

国立天文台の位置の目安では、東京で20時に中心が南中するのは6月上旬です。スピカの赤緯はおよそ南緯11度(理科年表)なので、北緯35度では南中高度が約43度にとどまり、天頂近くまで来るしし座ほどは上がりません。同じころ、うしかい座のアークトゥルスとしし座のデネボラを結ぶ春の大三角の一角をなし、三角形の南の頂点がスピカにあたります。大三角は東へ向くほど低く、スピカが最も低い頂点になります。

見える範囲(緯度と空の明るさ)

街の空ではスピカ以外がほとんど消えます。面積1294平方度と全天2位の広さを持ちながら、2等より明るい星はスピカ一つしかなく、残りは3等以下だからです。光害の少ない空へ出ると腕の並びが順に現れ、Y字として結べるようになります。南中高度が40度台にとどまるぶん低空の影響を受けやすく、南に建物や山がある場所では腕の南半分が霞に紛れます。スピカで位置を覚えておくと、暗い空へ出たときに腕をたどりやすくなります。

星座の中の見どころ

腕の付け根の一帯がおとめ座銀河団で、約5千万光年の距離に千個を超える銀河が集まっています。ただし、双眼鏡には粒が出ません。写真では数十個が一枚に写る領域ですが、もっとも明るいM104ソンブレロ銀河でも8等・長さ9分角しかなく、目に届くのは淡いしみが一つだけです。渦や中央を横切る暗黒帯は、長時間露光の画像の側にあります(銀河は渦を巻いた姿で見える)。双眼鏡で確かめられるのは、しみの位置と数がせいぜいです。

名前と物語

由来

ギリシャ神話では、正義の女神アストライアーと伝わります。人が黄金の時代を終えて争いを重ねるようになると、神々は次々に地上を去りましたが、彼女は最後まで残って人を諭したとされます。ついに愛想を尽かして天へ昇り、星座になったという話が伝わり、隣のてんびん座は、彼女が正義を量った天秤だとされ、乙女とてんびんは同じ物語の中で語られてきました。

正体と距離

スピカは、太陽系から約250光年の距離にある1つの星に見えますが、実際には2つの高温の星がおよそ4日で回り合う近接連星です。表面温度はどちらも2万度前後まで上がり、1等星のなかでも屈指の高温の組み合わせです。2つの間隔は太陽から水星までよりも狭く、望遠鏡でも1つの点にしか見えません。乙女の姿を作る目じるしは、単独の星ではなく、たがいを回り合う連星系そのものです。

変わるもの

スピカの位置は、天文学の歴史を語る星でもあります。紀元前2世紀、ギリシャの天文学者ヒッパルコスは、スピカの位置を100年以上前の記録と比べて、わずかなずれがあることに気づいたと伝わります。これが地球の歳差運動の発見につながったとされ、乙女座は星座の位置が動くことを人が初めて数字で確かめた場所の一つです。