ケンタウルス座

春の星座

見え方: 空が暗ければ肉眼で

ケンタウルス座は、日本からは人馬の胴から上の上半身だけが南の低い空に見える星座です。

形のたどりかた

うみへび座の南、からす座の下に広がる大きな区画です。日本の空に出ているのは人馬の胴から上だけで、腰から下は地平線の向こうにあります。春から初夏の宵、からす座の四辺形から真南へ視線を落とすと、3等前後の星がまばらに並ぶ帯に届きます。南の地平線から高度20度までを、左右に広く探すのがたどりかたです。星を線で結ぶより、区画の広がりとして眺めるほうが実際の見え方に合います。

目じるしになる星

日本から拾えるいちばん明るい星はθ星(約2.1等)で、赤緯はマイナス36度台です。東京(北緯35.7度)の南中高度は約18度、那覇では約27度になります。すぐ西のι星(約2.8等)と組にすると位置が定まります。南に低いぶん、等級どおりの明るさでは届きません(大気減光)。南の水平線まで抜けた海沿いか、南向きの高台を選ぶと、同じ2.1等でもずいぶん拾いやすくなります。

見ごろの時期と南中高度

20時ごろの南中が来るのは6月上旬で(国立天文台の一覧)、初夏の宵に南の低いところを通ります。南中高度は見る星で大きく変わり、東京ではθ星で約18度、ω星団で約7度、α星は地平線の下です。那覇まで下がると、同じ順に約27度・約16度・約3度になります。同じ帯を通るみなみじゅうじ座と違って、上半身だけなら本州からでも昇ります。ただし南中を外すと高度はすぐに落ちます。

見える範囲(緯度と空の明るさ)

見える範囲は緯度で決まります。星が地平線から出る条件は赤緯が「観測地の緯度マイナス90度」より北にあることで、東京(北緯35.7度)ではマイナス54.3度が境目になります。α星もβ星も赤緯マイナス60度台でこの線の外にあり、本州のどこからも昇りません。那覇では境目がマイナス63.8度まで下がってα星が高度3度ほどに顔を出しますが、そこでは光が大気に厚く吸われます(大気減光)。

星座の中の見どころ

ω星団(NGC5139)は約3.7等・見かけの直径36分で、球状星団としては全天で最も大きく見えます。ただし赤緯マイナス47度台のため本州の南中高度は一桁にとどまり、低い空を通る光は大気に吸われて弱まります。同じ球状星団でも、天頂近くを通るヘルクレス座大星団のほうが本州ではよく見えます。ケンタウルスAは写真で名高い銀河ですが、黒い帯が写るのは長時間露光の結果です。

名前と物語

由来

ケンタウロスは馬の下半身を持つ種族で、乱暴な仲間が多いなか、ケイローンだけは医術と弓術に通じた賢者として英雄たちの師になったと伝わります。ヘラクレスの矢が誤って触れ、ヒュドラの毒で癒えない傷を負ったケイローンは、みずから不死を手放して死を選び、その徳を惜しんだ神々によって星座に上げられたという話が伝わっています。

正体と距離

この星座でいちばん明るいα星は、日本からは地平線の下にあって見えません。しかし実際には太陽系にいちばん近い恒星系で、距離は約4.4光年しかなく、その伴星プロキシマ・ケンタウリはさらに近い約4.2光年先にあります。日本の空に昇るθ星やι星は、この一番近い星々よりずっと遠くにある、別の星です。

変わるもの

地球の歳差運動は、星座の高さそのものを長い目で動かします。今は本州から見えないα星も、赤緯は数千年の単位でゆっくり変わっていくため、いつか地平線の上に姿を見せる時代が来ると考えられます。今の「半分だけ」という制約は、今の時代に限った見え方にすぎません。そのときには、日本からもケンタウルス座の全身に近い姿が見られるようになるかもしれません。