みなみじゅうじ座

春の星座

見え方: 空が暗ければ肉眼で

みなみじゅうじ座は全天でいちばん小さい星座で、日本では沖縄から南の低い空に見えます。

形のたどりかた

十字は空に2つあり、まず大きいほうの「にせ十字」を除くところから始めます。にせ十字はほ座とりゅうこつ座の4つの星でできた、明るさのそろった一回り大きな十字です。本物は長い軸で約6度と小さく、4星が0.8等・1.3等・1.6等・2.8等と不ぞろいです。国立天文台の面積順の一覧でも88星座中もっとも小さく、次点のこうま座より約3平方度狭いだけです。東側にケンタウルス座の明るい2星が並んでいるかが、最後の決め手になります。面積は68.4平方度です。

目じるしになる星

α星アクルックス(約0.8等)が十字の足、β星(約1.3等)が東の腕、γ星(約1.6等)が頭にあたります。γ星だけ赤みがかった色をしており、ここで十字の向きが分かります。少し東のケンタウルス座α星とβ星が指極星で、AlfieAesthetics(英語の天文解説チャンネル)は、この2星の中点と十字の足を結ぶ線を延ばした交点が南天の極になると説明しています。低い空では色の差も明るさの差も鈍ります。

見ごろの時期と南中高度

日本で十字が立つのは12月下旬から6月中旬までのおよそ半年で、この間に南中の時刻が夜に入ります。見ごろは4月から5月の宵で、南中の前後1時間ほどが観望できる幅です。石垣島(北緯24.3度)の南中高度はγ星で約9度、α星で約2.6度、那覇では約7度と約0.7度になります。この幅を外すと水平線の下へ戻り、見えている間も大気減光の強い高さにとどまります。

見える範囲(緯度と空の明るさ)

境目は緯度です。赤緯マイナス63度台のα星が昇るには北緯26度あたりより南が要り、本州や九州からは十字の全体が立ちません。沖縄本島では足が水平線に接する高さにとどまり、宮古・八重山(北緯24度台)まで下がって、ようやく全体が地平線の上に出ます。南が水平線まで抜けた海側を選ぶことと、低空の湿りと街明かりが少ない夜(光害)であることが、同時に要ります。

星座の中の見どころ

十字のそばに2つあります。コールサックは天の川を黒く抜く暗黒星雲で、空が暗ければ肉眼でも星のない穴として分かりますが、街明かりの下では周りの天の川ごと消えます。宝石箱(NGC4755)は約4.2等・直径10分の散開星団で、双眼鏡ではひとかたまりのしみに数個の粒が乗る程度に見えます。色とりどりの粒に分かれるのは写真の側です(星は写真のように色とりどりに見える)。

出典

  1. 公的機関 国立天文台 星座名・星座略符一覧(面積順)
  2. 動画・英語 AlfieAesthetics Find North with the Stars - The Southern Cross (Southern Hemisphere)

名前と物語

由来

みなみじゅうじ座は、古代ギリシャの神話を持ちません。2世紀の天文学者プトレマイオスは、この4星をケンタウルス座の一部として記録していました。大航海時代を経た17世紀、プランシウスらの星図をもとにバルチュが独立した星座として描き、1679年にはフランスのロワイエがあらためて星座として定めたとされ、複数の人の手を経て今の姿になりました。

正体と距離

十字をつくる4星の中でも、頭にあたるガクルックスは約88光年と際立って近く、肉眼で見える赤色巨星の中では地球にもっとも近い部類です。対して足のアクルックスは約320光年先にあり、実際には複数の星が重なった多重星系です。近い星と遠い星が同じ十字の中に同居しているという点は、この小さな星座でもほかと変わりません。

変わるもの

歳差運動によって、星座の見える範囲は数千年という単位でゆっくり動きます。みなみじゅうじ座もその一つで、紀元前1000年ごろには地中海沿岸からも低い空に見えていたと考えられていますが、歳差で赤緯が南へ動き、プトレマイオスが48星座をまとめた2世紀ごろには、すでに地平線の下に沈んでいました。