うみへび座

春の星座

見え方: 空が暗ければ肉眼で

うみへび座は全天でいちばん広い星座で、蛇の頭から尾の先まで100度以上あります。

形のたどりかた

頭からたどります。かに座の南西に3等から4等の星が5つ集まる小さなかたまりがあり、これが蛇の頭です。そこから南東へ下るとアルファルドに届き、さらに東へ、からす座の南をくぐって尾に至ります。全長は100度を超え、頭が南中してから尾が南中するまで七時間近くかかります。頭と尾がそろって高く昇ることはありません。頭のかたまりは差し渡し5度ほどで、双眼鏡の視野に一度に収まります。胴は3等から4等の星でつなぎます。

目じるしになる星

アルファルド(α星、約2.0等)が唯一の目だつ星です。橙色に見える巨星で、アラビア語の名は「孤独なもの」を意味します。周囲10度以上に2等より明るい星が無いため、名前のとおり一つだけで光ります。レグルスから南西へ下ろすと行き当たる位置にあります。頭のかたまりは3等以下なので、街の空では頭から先に消えていきます。「ヒドラの心臓」とも呼ばれ、位置を覚えておくと春の低い空の基準になります。

見ごろの時期と南中高度

国立天文台の位置の目安では、20時に中心が南中するのは4月下旬です。ただし全天最大の1302平方度を占めるため、頭と尾の南中は二か月以上ずれます。アルファルドの赤緯はおよそ南緯9度で、東京での南中高度は約46度。尾の先はてんびん座の南にあって赤緯マイナス25度前後まで下がり、頭の側とは高さがまったく違います。頭を宵に見るなら早春、尾まで含めるなら初夏まで待つことになります。同じ星座を二季にまたいで見る形です。

見える範囲(緯度と空の明るさ)

アルファルドだけは市街地でも見つかります。2.0等の光が、周りに競う相手を持たないからです。一方で胴を作る星は3等から4等、限界等級が4等台の空では線がつながらず、蛇の姿にはなりません。全体を追うには光害の少ない空と、南が開けた場所の両方が要ります。尾の南端は東京でも高度30度に届かず、札幌からは20度あまりです。一つの星座の中で、見える条件が場所によってこれほど変わる例はほかにありません。

星座の中の見どころ

散開星団M48は双眼鏡で粒に分かれます。5.8等・視直径54分角あり、こいぬ座のプロキオンの南に位置して、低倍率の視野いっぱいに数十個が散ります。一方、7.5等の渦巻銀河M83と7.8等の球状星団M68は赤緯マイナス26度より南にあって高度が上がらず、双眼鏡では淡いしみのまま終わります。数字の等級ほどには見えない側の天体です。M48だけは、街をはずれれば双眼鏡で形の分かる対象になります。

名前と物語

由来

からす座とコップ座の物語に出てくる水蛇と伝わります。アポロンに水を汲みに行かされたからす座のカラスが用事を怠けた言い訳に持ち出した相手で、濡れ衣を着せられたまま、カラスが二度と杯の水に届かないよう、カラスとコップ座の杯のあいだに置かれたとされます。全天でもっとも長い星座に、濡れ衣を着せられた脇役という役回りが重なっています。

正体と距離

頭からしっぽまでを束ねる目じるしのアルファルドは約177光年先にある、太陽のおよそ50倍にふくらんだ橙色の巨星です。周囲に肩を並べる明るい星がないため、実際の空でも際立って孤立した位置にあり、「孤独なもの」という意味のアラビア語の名は、見た目の寂しさだけでなく、天球上の実際の配置ともよく合っています。

変わるもの

全天最大の面積を持つこの星座は、頭から尾までの100度以上に星がまばらに連なっているため、形の崩れ方も一様ではありません。天球上を動く速さや向きは星ごとにばらばらで、長い時間で見れば、いまよりも長く伸びたり、逆に途切れて見えたりする部分が出てくると考えられます。もっとも長い星座は、もっとも崩れやすい星座でもあります。