ほ座

春の星座

見え方: 空が暗ければ肉眼で

ほ座は、みなみじゅうじ座と間違えられるにせ十字の、4星のうち2つを受け持つ星座です。

形のたどりかた

にせ十字は、この星座のκ星・δ星とりゅうこつ座のι星・ε星でできています。春の宵に南の低い空を見て、2等前後の4星がゆがんだ十字に並んでいたらこちらです。4つの明るさがおおむねそろい、一回り大きいほうがにせ十字で、みなみじゅうじ座のほうは小さく、1つだけ暗い星が混じります。東側に指極星の2星が無いことも、あわせて手がかりになります。

目じるしになる星

γ星(約1.8等)がこの星座で最も明るく、何重にも連なる多重星として知られています。赤緯はマイナス47度台で、東京の南中高度は約7度、那覇で約16度です。1.8等という数字どおりの明るさでは届かず、低い空では2等から3等ほどに落ちて見えます(大気減光)。明るさで探すと見つからないので、にせ十字の西の足元という位置で拾うほうが早く届きます。

見ごろの時期と南中高度

20時ごろに南中するのは4月上旬で(国立天文台の一覧)、春の宵に南の低い空を通ります。南中高度は緯度で大きく動き、κ星(赤緯マイナス55.0度)は東京(北緯35.7度)でマイナス0.7度、つまり水平線の下です。潮岬で約1.6度、鹿児島で約3.4度、那覇で約8.8度と上がっていきます。にせ十字の残る2星を持つりゅうこつ座も、同じ帯を同じころに通ります。

見える範囲(緯度と空の明るさ)

本州では、にせ十字の下半分が水平線に触れます。κ星・δ星は赤緯マイナス55度前後で、東京では計算上ほぼ地平線と同じ高さになり、実際には大気の層に沈んで拾えません。九州の南端で数度、那覇では10度近くまで上がって形が立ちます。高度10度以下では、空の暗さより南が抜けているかどうかが効きます。夜空の明るさより先に地形で場所を選ぶ、めずらしい星座です。

星座の中の見どころ

IC2391は約2.5等・直径50分と大きく明るい散開星団で、南半球では「南のプレアデス」と呼ばれています。赤緯マイナス53度なので東京の南中高度は1度台、那覇でも約11度にとどまり、本来の広がりは日本の空では出ません。プレアデス星団が冬の天頂近くを通るのと比べると、同じ大きさの集団でも見え方が別物になります。双眼鏡は低倍率で視野の広いものが向きます。

名前と物語

由来

もとはアルゴ座という、ギリシャ神話の英雄イアーソーンたちが乗った船をかたどる一つの大きな星座でした。金の羊毛を求めてコルキスへ航海したアルゴー船の物語にちなみますが、18世紀にフランスの天文学者ラカイユが大きすぎるという理由で竜骨・船尾・帆の3つに分割し、帆の部分がこのほ座として残ったとされます。船そのものの姿は、いまの星図からは失われています。

正体と距離

もっとも明るいγ星は、約1100光年先にあるウォルフ・ライエ星という、晩年に外層を激しく吹き飛ばしている大質量の星です。肉眼で見える中ではもっとも明るいこの種類の星で、伴星を含む多重星系でもあります。地球から見える星の中でも、終末期に近い姿をこれほどはっきり示す例は多くありません。

変わるもの

ウォルフ・ライエ星は、大質量の星が寿命の終わりに差しかかったときに見せる、ごく短い段階です。γ星もいずれは外層を吹き飛ばし尽くし、超新星として爆発すると考えられています。正確な時期は分かっていませんが、オリオン座のベテルギウスと同じように、いつか大きく姿を変える星の一つです。伴星を持つ多重星系であるだけに、爆発がどこまで周囲に影響するかも注目されています。