からす座

春の星座

見え方: 肉眼で見える

からす座は、春の南の低い空にぽつんと浮かぶ、3等の星がつくるゆがんだ四辺形です。

形のたどりかた

スピカの南西、低い空にできた小さな四辺形をさがします。2.6等から3.0等の四つの星が一辺7度ほどのゆがんだ台形を作り、傾いた帆のような形に見えます。周りは3等より明るい星の少ない空域なので、切り抜きのように浮き上がります。ただし高度が低い時間帯は、四つのうち南の二つから順に霞へ沈み、上の二つだけが残ることがあります。四辺形の中に明るい星が入らないので、輪郭だけが空に残る形になります。

目じるしになる星

北西の角のギェナー(γ星、2.6等)がもっとも明るく、北東の角がアルゴラブ(δ星、3.0等)です。ギェナーからアルゴラブへ結んだ線を、四辺形四つぶん北東へ延ばすとスピカに届きます。逆にスピカから南西へ下ろせば、この四辺形に降ります。四つの等級差は0.4等しかなく、どれが主星か見た目では決めにくい並びです。アルゴラブは二重星ですが、相手は9等と暗く、肉眼でも双眼鏡でも一つに見えます。

見ごろの時期と南中高度

国立天文台の位置の目安では、東京で20時に中心が南中するのは5月下旬です。中心の赤緯はおよそ南緯18度なので、東京での南中高度は約36度、南中しても空の低いところにとどまります。札幌では約29度、那覇では約46度と、南へ行くほど条件がよくなります。南の視界が開けた場所が前提で、低い空ほど光が大気を斜めに通るぶん暗く見えます(大気減光)。南の空に開けた場所であれば、南中の前後が見つけやすい時間帯になります。

見える範囲(緯度と空の明るさ)

四つの星そのものは市街地でも追えます。2.6等から3.0等は、肉眼の限界等級が4等ほどの空でも残るためです。ただし高度が36度と低く、地平線の近くに光の層がある方角では、等級から想像するより暗く見えます。緯度の効き方は南ほど有利で、南西諸島では四辺形が高く上がり、北海道では南向きに開けた場所が要ります。四つの明るさが似ているので、どれか一つが霞に沈むと形の見当が急につきにくくなります。

星座の中の見どころ

双眼鏡を向けても、増えるものがありません。メシエ天体を一つも含まず、写真で名高いアンテナ銀河(NGC4038・4039)がどちらも10等より暗く、視直径も数分角しかないからです。衝突する二つの銀河から伸びる触角は、長時間露光の画像にだけ現れる姿です(銀河は渦を巻いた姿で見える)。ここは四辺形そのものを確かめる星座と考えるのが、実際に近いところです。増えないことを確かめる場所として使えます。

名前と物語

由来

太陽神アポロンに仕えた使いの鳥、カラスと伝わります。アポロンに頼まれてコップ座の杯で水を汲みに行ったカラスは、途中でイチジクが熟すのを待つうちに用事を忘れ、遅れた言い訳にうみへび座の水蛇のせいにしたとされます。嘘を見抜いたアポロンは怒り、カラスと杯と水蛇をまとめて星座にし、カラスが二度と杯の水を飲めないようにしたという話が伝わっています。

正体と距離

四辺形をつくる4星も、奥行きはそろいません。北西の角のギェナーは約165光年、北東の角のアルゴラブは約87光年先にあり、地球から見て重なっているだけで、実際には倍近い差があります。四辺形はゆがんだ台形に見えますが、奥行きまで含めれば、平面の図形とは似ても似つかない立体の配置です。

変わるもの

4星は、天球上を別々の速さと向きで動いています。数万年という時間の単位で見れば、いまのゆがんだ台形は少しずつ形を崩し、からすの姿と結びつけられてきたこの星座も、いずれ今とは違う星の並びになっていくと考えられています。人の一生で気づけるほどの動きではありません。星座線という考え方そのものが、その時代だけの仮の姿にすぎないことを、この四辺形もいずれ示すことになります。