かに座

春の星座

見え方: 空が暗ければ肉眼で

かに座は、いちばん明るい星でも3.5等しかない、ふたご座としし座の間の暗い星座です。

形のたどりかた

先に空白を見つけます。ふたご座のポルックスとしし座のレグルスを結ぶと、その中ほどに明るい星の無い一角ができます。そこが、かに座です。中心にあるぼんやりした光の点を要にして、3.5等から4.7等の星が北と南へ開く小さなY字を作ります。星の並びより、空白の位置から決めるほうが早い星座です。Y字の縦棒は南へ、二本の枝は北東と北西へ開き、全体は10度ほどの小さな図形です。

目じるしになる星

アルタルフ(β星、3.5等)がもっとも明るい星で、1等星のおよそ10分の1の明るさしかありません。Y字の分かれ目にあたるアセルスの二星は3.9等と4.7等で、ロバを意味する古い名を持ちます。二頭のロバに挟まれた飼い葉桶がプレセペで、この淡い光のほうが先に目に入ります。星の名で覚える星座ではありません。アルタルフは黄道の近くにあり、月が通りかかると数日は見つけにくくなります。

見ごろの時期と南中高度

国立天文台の位置の目安では、東京で20時に中心が南中するのは3月下旬です。冬の星座が西へ傾きはじめるころ、南の高い空へ来ます。中心の赤緯はおよそ北緯20度なので、東京での南中高度は約74度。天頂近くまで上がるぶん、低空の光の層を通らずにすみます。那覇では約84度、札幌では約67度と、緯度による差は小さいほうです。南中のころは、冬の星座がまだ西の空に残っている時間帯にあたります。

見える範囲(緯度と空の明るさ)

この星座は空の明るさで丸ごと消えます。限界等級が4等ほどの市街地では3.5等のアルタルフが辛うじて残る程度で、Y字は結べません。プレセペも背景の明るさに溶けて見えなくなります。限界等級5等台の郊外でようやく、もやのような一点として浮かび、6等台の空では広がりまで肉眼で分かります(夜空の明るさ)。肉眼でプレセペを見つけられるかどうかが、その場所の空の暗さの目安になります。

星座の中の見どころ

中心にあるのがプレセペ星団(M44)です。肉眼にぼんやりしたもやの一点として見え、空が暗いほど輪郭がはっきりします。双眼鏡を向けると数十個の粒に分かれます。視直径は1.5度と満月三つぶんに広がるため、倍率の低い双眼鏡ほど全体が視野に入ります。南にあるM67は6.9等で、同じ双眼鏡では粒に分かれず淡い雲のままです。およそ600光年先にあり、肉眼で形の分かる散開星団としては近い部類です。

出典

  1. 公的機関・英語 IAU Division C Working Group on Star Names IAU Catalog of Star Names
  2. 公的機関・英語 CDSストラスブール天文データセンター SIMBAD astronomical database — beta Cnc

名前と物語

由来

ギリシャ神話では、大きな蟹のカルキノスと伝わります。ヘラクレスが怪物ヒュドラと戦っていたとき、ヘラクレスを苦しめようとするヘラの命でこの蟹が足に挟みつきましたが、ひと踏みで潰されてしまいました。手柄は立てられなかったものの、ヘラクレスに敵対するヘラはその忠義に報い、蟹を星座として天に上げたという話が伝わっています。

正体と距離

かに座の方向には、肉眼には見えない6等星の55番星という恒星があり、実際には5つの太陽系外惑星が見つかっています。もっとも内側の惑星は岩石でできた高温の星とみられ、肉眼のY字からは想像できない賑やかな系です。星座の中でいちばん目立つのは星ではなく、プレセペ星団という数百個の星の集まりのほうです。アルタルフは、国際天文学連合が2018年に認めた正式な名前は「タルフ」で、橙色の巨星、地球から約320光年先にあります。

変わるもの

「北回帰線」という名は、この星座に由来します。太陽が最も北まで上がる夏至のころ、太陽がかに座の方向にあった時代に付けられた名前で、地図の緯度線に今も残っています。地球の歳差運動で夏至の太陽の位置は少しずつ動き、今の夏至の太陽はふたご座とおうし座の境界あたりにあり、名前が付いた時代とは星座がずれています。