さそり座

夏の星座

見え方: 肉眼で見える

さそり座は、頭のS字から尾のとげまで、曲がった星の並びがさそりの体をなぞる星座です。

形のたどりかた

頭のS字から入ります。西側に2等前後の3星が縦に並ぶのが頭と両腕で、そこから南東へ体が下り、尾が持ち上がってとげで終わるまでひと続きにたどれます。全体はゆるいJ字か釣り針の形で、折れ返る点が2か所あります。赤い1等星を体の中心に置き、北西と南東へ順に星を拾うと迷いません。尾の先は南に低く、街では体の途中で切れます。とげの東はいて座の区画です。

目じるしになる星

アンタレス(約1.0等)が体の中心で光る赤い星です。名前はギリシャ語で「火星に対抗するもの」を意味し、色が火星とよく似ていることから来ています。この方向に赤い星が2つ並んでいたら、片方は火星です。見分けはまたたくかどうかと、日をおいて星の間を動くかどうかで付きます。アンタレス自身も0.6等から1.6等の間で明るさが変わる変光星です。

見ごろの時期と南中高度

南中が20時ごろに来るのは7月下旬で(国立天文台の一覧)、夏の宵の南に出ます。赤緯が低い星座で、アンタレス(赤緯マイナス26.4度)の南中高度は東京(北緯35.7度)で約28度、尾のとげのシャウラ(マイナス37.1度)は約17度です。那覇まで下がってもシャウラは約27度で、日本では体全体が南の低空にとどまります。頭の上にはへびつかい座の広い区画が続きます。

見える範囲(緯度と空の明るさ)

低い空をどこまで見通せるかが、そのまま見える範囲になります。頭のS字は高度30度を超えるので市街地でも拾えますが、尾は高度20度以下に入り、街の光の層と重なって消えます。高度20度では光が通る大気の量が天頂の約3倍になり(大気減光)、色も明るさも落ちます。南が海か山に開けた場所を選び、南中の時刻に合わせて見に行くと、同じ夜でも結果が変わります。

星座の中の見どころ

アンタレスのすぐ西にさそり座M4(約5.9等の球状星団)があり、双眼鏡では輪郭のぼやけた丸いしみに見えます。尾のとげの東には、散開星団が2つ並びます。プトレマイオス星団は約3.3等・直径80分と大きく、空が暗ければ天の川の中のもやとして肉眼でも分かります。バタフライ星団は約4.2等で、双眼鏡なら数十個の粒に分かれて見えます。

名前と物語

由来

ギリシャ神話では、地母神ガイアが放った蠍と伝わります。狩人オリオンが「地上のあらゆる獣を狩り尽くせる」と豪語したことへの罰として送られ、猛毒の針でオリオンを刺し殺したとされます。以来ふたつの星座は空でも追いかけっこを続けており、オリオン座が西へ沈むころにさそり座が東から昇るという、両者が同時に空に出ない配置がその名残だと語られます。

和名と人が使ってきたこと

日本では、赤く揺らめく光から酒酔い星という和名で呼ばれてきました。山口や大分の一部地方では、酒に酔って顔が赤くなった姿に見立てたと伝わります。さそり座全体は、S字のカーブを釣り針に見立てて魚釣り星や鯛釣り星とも呼ばれ、漁の目じるしとして使われてきました。赤い星ひとつにも、地方ごとに違う暮らしの目線が重なっています。

正体と距離

アンタレスは太陽系から約550光年の距離にある赤色超巨星です。直径は太陽のおよそ680倍にふくらんでおり、もし太陽の位置に置き換えると火星の軌道近くまで届く大きさになります。同じ1等星でもベガやアルタイルとはまるで違う晩年の巨大な星で、明るさは太陽のおよそ10万倍に達します。1等星の中でも、これほど巨大にふくらんだ星はほかに多くありません。

変わるもの

アンタレスは、寿命が尽きればいずれ超新星として爆発すると考えられている晩年の星です。時期は分かっていませんが、爆発すれば蠍の心臓は数週間のあいだ昼でも見えるほど明るくなり、そのあとは今の赤い姿を消して、星座から一つの星が失われることになります。その日がいつ来るかは、現代の観測でもまだ予測できていません。