こと座

夏の星座

見え方: 肉眼で見える

こと座は、ベガ一つなら街でも見えますが、形をたどるには郊外の暗い空が要る星座です。

形のたどりかた

夏の宵、天頂近くでいちばん明るい白い星がベガです。そこから南東へ少し下がると3等から4等の4星が縦に細長い平行四辺形を作っており、これが竪琴の胴にあたります。ベガと平行四辺形の上辺で細い三角を作ると位置が固まります。全体は差し渡し7度ほどと小さく、街の空ではベガだけが残り、胴の4星は背景に溶けます。はくちょう座の西隣という位置も手がかりです。

目じるしになる星

ベガ(約0.0等)が目じるしです。等級の物差しの原点として長く使われてきた星で、0等の定義に近い明るさをしています(見かけの等級)。和名の「織姫」は七夕の伝えから来た呼び方で、星の名としてはベガが通ります。距離は約25光年と近く、色は青白く見えます。わし座のアルタイル、デネブと結ぶと夏の大三角になり、その中でいちばん明るい頂点です。

見ごろの時期と南中高度

20時の南中は8月下旬で(国立天文台の一覧)、夏の宵から秋の初めまで高いところにあります。ベガの赤緯はプラス38.8度で、東京(北緯35.7度)では天頂のわずか北を通り、南中高度は約87度になります。ほぼ真上なので、低空の街明かりや大気減光の影響を受けにくい位置です。天頂付近は首が疲れるため、寝ころべる場所を選ばないと長くは見ていられません。

見える範囲(緯度と空の明るさ)

ベガと胴の4星では、必要な空が一段違います。ベガは0等なので市街地の空でも見えますが、平行四辺形は3等から4等で、光の多い空では2星しか拾えないことがあります。4等星まで見える空なら形が閉じます。15分以上暗さに目を慣らしてから見ると拾える数が増え(暗順応)、同じ場所でも数え直すたびに結果が変わります。赤緯が高く、北海道から沖縄まで緯度の制限はありません。

星座の中の見どころ

増えるものと増えないものが並んでいます。ε星は双眼鏡で2つに分かれる二重星で(こと座イプシロン星)、その2つがさらに2つずつに割れるのは双眼鏡の外です。M57(リング星雲)は約8.8等・視直径1.4分で、双眼鏡ではぼんやりした点にとどまり、写真で見る輪の形は出ません。β星とγ星を結んだ線の中ほどを探すと見つかります。

名前と物語

由来

この竪琴は、もとは神ヘルメスが亀の甲羅で作ったものと伝わります。ヘルメスはそれをアポローンへ贈り、アポローンは息子の吟遊詩人オルペウスに与えたとされます。歌と演奏で獣や岩まで動かしたというオルペウスが、酒神の信女たちの手にかかって命を落としたのち、アポローンとムーサたちが竪琴を星座として天に残したという話が伝わっています。

正体と距離

ベガは、自転の速さが際立つ星です。赤道での自転周期はわずか12時間半ほどで、遠心力によって星そのものが横に少しつぶれた形になっています。極と赤道で表面の温度も明るさも違うため、見る角度によって明るさの測られ方が変わる、珍しい星として知られています。肉眼では気づけない、精密な観測でようやく分かった姿です。

変わるもの

歳差運動によって、天の北極が指す星は約2万6000年かけてゆっくり入れ替わっていきます。ベガはおよそ1万2000年前にも北極星の役目を果たしており、いまから1万2000年ほど先には、再びこの星が天の北極のそばに来ると考えられています。今の北極星が、いずれ交代する数少ない例の一つです。