へび座

夏の星座

見え方: 空が暗ければ肉眼で

へび座は、空でただ一つ、へびつかい座をはさんで体を頭部と尾部に切り離された星座です。

形のたどりかた

先にへびつかい座の五角形を見つけます。その西側にぶら下がる小さな三角形が頭部で、2.6等のウヌクアルハイを含む星の列が首から頭へ続きます。体は五角形の裏に隠れて途切れ、東側に出たところから尾部が始まり、わし座のアルタイル寄りへ星の列が伸びます。二つの断片を、間の星座ごと一続きの蛇として読むのがこの星座のたどりかたです。

目じるしになる星

頭部の2.6等のウヌクアルハイが、二つの断片を通じて最も明るい星です。うしかい座のアルクトゥールスから東へ約20度の位置にあり、ここが蛇の心臓と呼ばれてきました。尾部の側には3等星がなく、4等前後の星が斜めに並ぶだけなので、街の空では列そのものが消えます。頭部は明るい一星、尾部は星団を手がかりにするという、二通りの探し方に分かれます。

見ごろの時期と南中高度

国立天文台の位置の目安は二つに分かれ、頭部が7月中旬、尾部が8月中旬の20時ごろに南中します。頭部のウヌクアルハイは赤緯約+6度で、北緯35度なら南中高度は約61度です。尾部はへびつかい座をはさんだ東側にあり、赤緯-14度あたりまで南へ寄るため、南中高度は約40度にとどまります。同じ晩に追うなら、西へ傾いた頭部から先に見ます。

見える範囲(緯度と空の明るさ)

頭部は2.6等の一星が街でも残るのに対し、尾部は4等台の星ばかりで、市街地からは形が消えます。緯度の差は小さく、北緯35度なら二つとも地平線の上に十分上がりますが、尾部は南に低いぶん大気減光で暗く沈みます。環境省の星空観察が示すように同じ夜でも街の方角の空は明るく、尾部を追うなら南が開けた暗い側を選ぶことになります。

星座の中の見どころ

頭部のへび座M5は5.7等の球状星団で、双眼鏡では縁のぼやけた丸いしみ、空が暗ければ肉眼でも星でない何かとして分かります。尾部のわし星雲は6.0等の星の集まりで、双眼鏡では20個ほどの星が三角に並ぶ姿に見えます。写真で知られる柱の構造は目にはまったく出ず、周りのガスも淡い背景として沈みます。

名前と物語

由来

名医へびつかい座のアスクレピオスが手にする蛇と伝わります。ある日、殺した蛇が別の蛇の運んできた薬草で生き返るのを見たアスクレピオスは、その力を使って死者さえ生き返らせる医術を身につけたとされます。蛇が脱皮して生まれ変わる姿が治癒や若返りの象徴とされ、いまも医療のシンボルに蛇の絡む杖が使われているのは、この故事に由来すると言われています。

正体と距離

頭部の目じるしのウヌクアルハイは約74光年先にある、赤みを帯びた巨星です。空ではへびつかい座にさえぎられて頭部と尾部の2つに引き離されていますが、もともと一つの星座として扱われてきた歴史から、いまも学術上は1つの星座として数えられ、星図の上だけ分断された珍しい姿になっています。見た目は2つに離れていても、扱いはあくまで1つの星座です。

変わるもの

頭部と尾部は、星の並びが続いていたから分けられたのではなく、へびつかい座が占める範囲によって引き裂かれた境界線の産物です。頭部と尾部の星々も天球の上ではそれぞれ別の速さで動いているため、長い時間で見れば、いまよりもっとかけ離れた場所に見える2つの断片になっていくと考えられます。境界という人の決めごとと、星そのものの動きという自然の変化は、別々に進んでいきます。