たて座

夏の星座

見え方: 空が暗ければ肉眼で

たて座は、星をつないで形にするのではなく、天の川の濃くなる一角として見る星座です。

形のたどりかた

わし座のアルタイルから南西へ約15度下ると、天の川の帯が急に濃くなる一角に入ります。ここがたて座で、最も明るいα星でも3.9等、線でたどれる形は残っていません。濃い部分は「たて座の星雲状の広がり」と呼ばれ、望遠鏡の登場前から雲のようなむらとして知られていた領域です。星ではなく、天の川の明るさのむらを探すのが、この星座の見つけかたになります。

目じるしになる星

目じるしになる星がない星座です。3.9等のα星が最も明るく、市街地では主な四星がすべて消えます。代わりの目じるしは両隣で、北東にわし座のアルタイル、南西にいて座の南斗六星が並び、その二つを結ぶ線の中ほどで天の川が最も明るくなる場所がここにあたります。星の名前ではなく、天の川の濃淡のほうを目じるしにします。

見ごろの時期と南中高度

国立天文台の位置の目安では、8月下旬の20時ごろに南中します。α星の赤緯は約-8度で、北緯35度なら南中高度は約47度です。天の川の濃い部分を見るには高さが要るため、南中の前後に絞ると条件がそろいます。50度に届かない高さなので低い空の大気減光が効き、南に山や建物のある場所からは帯の下側が隠れます。

見える範囲(緯度と空の明るさ)

空の明るさで見え方が段違いに変わる星座です。郊外の暗い空では、天の川が濃くふくらむ様子が肉眼で分かります。市街地では天の川ごと消え、4等の星も残らないため、星座の位置すらつかめません。緯度の側は北緯35度で南中高度が約47度、北緯43度でも約39度と大きくは変わらず、差を作るのは緯度よりも光害の側です。

星座の中の見どころ

野鴨星団(M11)が中心です。6.3等、視直径14分角の散開星団で、双眼鏡では丸い綿のようなしみに見え、縁の1星だけが粒として光ります。口径が上がるほど、しみの中から星が現れて数が増えていく対象で、50mm前後の双眼鏡でざらつきが感じられるあたりが境目です。近くのM26は8.0等と暗く、淡い光の点にとどまります。

名前と物語

由来

ギリシャ神話を持たない、比較的新しい星座です。1684年、ポーランド出身の天文学者ヨハネス・ヘヴェリウスが、オスマン帝国の大軍からウィーンを守った国王ヤン3世ソビェスキの武勲をたたえて設けました。もとの名は「ソビェスキの盾」で、星座としては目立たない一角ですが、由来は星ではなく地上の戦の記憶にあります。

正体と距離

α星をふくむ数個の暗い星の向こうに広がる天の川のむらは、飾りではなく実際に星の数が多い方向です。地球から見て天の川銀河の渦の腕にほぼ沿った視線にあたるため、同じ面積でもほかの方角よりずっと多くの星が奥行き方向に重なって見えています。肉眼に届くのは、その重なりがつくる淡い明るさのむらです。

変わるもの

この星座のδ星は、規則正しく脈打つように明るさを変える代表的な星です。数時間という短い周期でわずかに明るさが上下し、同じ仕組みで変光する星の仲間は、この星の名から「デルタ・スクティ型変光星」と呼ばれています。肉眼で追うには細かすぎる変化ですが、星の内部がいまも脈打っている証拠です。